健康寿命を延ばすために、自分自身の"危険因子"をチェックしましょう

 
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 みなさんの笑顔と元気をサポートする「健康ジャーナル」。うめつLS内科クリニック(福島市)の梅津啓孝先生が、健康寿命を延ばすリスク管理についてお話しくださいます。
健康寿命を延ばすために、自分自身の"危険因子"をチェックしましょう
うめつLS内科クリニック
院長

梅津 啓孝 先生
1982(昭和57)年に福島県立医科大学を卒業。同大大学院卒業時、医学博士号取得。済生会福島総合病院内科科長、医療法人立谷病院副院長、公立藤田総合病院内科科長などを経て2005(平成17)年、福島市にうめつLS内科クリニックを開院。日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本内科学会総合内科専門医。
 
 
 11月号では、健康寿命を延ばすことの大切さをお話いたしました。今月号では、平均寿命と健康寿命を延ばすために必要な危険度(リスク)管理についてお話いたします。
 平成22年度の日本人の死因別死亡数の内訳は、がん29.5%、心疾患15.8%、脳血管疾患10.3%、肺炎9.9%などでした。心疾患と脳血管疾患には、動脈硬化が極めて強く関係しています。したがって動脈硬化の発症と進展にブレーキをかけると、死亡の約4分の1は先延ばしできることになります。
生活習慣の修正は禁煙から

 動脈硬化の進展にブレーキをかけるためには、動脈硬化を進めてしまう、それぞれの原因に対策を立てて実行することが重要です。まず、加齢、遺伝素因、性別、女性の閉経などは、やむを得ないこととして割り切るしかありません。生活習慣の修正は、まず、禁煙。そして、内臓脂肪を蓄積させてしまう過食、アルコールの過剰摂取、運動不足、睡眠不足、ストレスの大きい生活などを改善することが基本です。また、動脈硬化を進める病気、たとえば高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病、高尿酸血症などを適切に治療していくことが、特に重要です。

生活の質を低下させる喫煙

 喫煙は、呼吸器、消化器、その他、ほぼ全身の臓器のがんのリスクを高めることはご存じだと思います。また、慢性閉塞性肺疾患などを併発しやすく、呼吸機能の低下や肺感染症のため、生活の質を低下させます。何よりも喫煙により虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)が増加します。NIPPON DATA80という日本人を対象とした疫学研究によると、吸わない人と比較して、喫煙男性の虚血性心疾患による死亡の危険性は、1日1箱以内の喫煙で1.5倍、2箱以上で4.2倍に跳ね上がります。具体的には、男性40歳からの平均余命が非喫煙者で42.1年、禁煙者で40.4年、喫煙者で38.6年であり、喫煙者は非喫煙者よりも平均余命が3.5年短いのです。また、喫煙者の中でも1日に2箱以上吸う人の平均余命はさらに短く、38年に満たなかったのです。さらに、喫煙は自分自身のみならず、家族や周囲の人たちの健康に影響を与えますので、即刻の禁煙をお勧めします。

適切な治療目標値設定が重要

 高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病、高尿酸血症などの生活習慣病を治療する場合に考えなければならないのは、血圧であれ、血糖値であれ"個人に合わせた適切な治療目標値"の設定です。たとえば、心疾患の危険度が高い人には、より厳密な血圧や脂質の治療が必要であることはご理解いただけると思います。
 一方、高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病では、病気の根本のところで「インスリン抵抗性」という共通する病態が存在しています。危険因子の足し算も重要ですが、それとは一線を画した治療の考え方が必要となったのです。これが「メタボリックシンドローム」という疾患のとらえ方です。

内臓脂肪蓄積の有無が診断基準

 メタボリックシンドロームの診断基準は、まず、内臓脂肪の蓄積があることが前提です。腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上で、これに相当します。さらに(1)中性脂肪150ミリグラム以上かつ(または)HDLコレステロール40ミリグラム未満(2)収縮期血圧130以上かつ(または)拡張期血圧85以上(3)空腹時血糖110ミリグラム以上-の3項目のうち、2項目以上を合併すれば、メタボリックシンドロームと診断されます。これらの項目は、独立した危険因子による治療開始の目標値よりも低めに設定されています。つまり、より早期からの介入が必要ということを示しています。
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 次回は、メタボリックシンドロームの仕組みと予防、治療法についてお話いたします。
12月号より