メタボリックシンドロームが持つ 心臓病や脳血管障害発症の危険性

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 みなさんの笑顔と元気をサポートする「健康ジャーナル」。うめつLS内科クリニック(福島市)の梅津啓孝先生が、引き続きメタボリックシンドロームについてお話くださいます。
メタボリックシンドロームが持つ心臓病や脳血管障害発症の危険性
うめつLS内科クリニック
院長

梅津 啓孝 先生
1982(昭和57)年に福島県立医科 大学を卒業。同大大学院卒業時、医学博士号取得。済生会福島総合病院内科科長、医療法人立谷病院副院長、公立藤田総合病院内科科長などを経て2005(平 成17)年、福島市にうめつLS内科クリニックを開院。日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本内科学会総合内科専門医。
 
 1月号では、メタボリックシンドロームの基本的な仕組みを お話いたしました。今月は、心臓病や脳血管障害発症に対するメタボリックシンドロームの危険性や、独立した危険因子との関係についてお話したいと思いま す。少し難しい内容になるかもしれませんが、結論は単純ですので、最後までお読みいただければ幸いです。

合併した時に危険度アップ

 1月号で、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)は、メタボリックシンドロームとは比較的独立して、動脈硬化に悪影響を及ぼすと説明いたしまし た。では、高コレステロール血症とメタボリックシンドロームが合併した時の危険度は、どのように変化するのでしょうか。久山町研究(九州大学医学部で行わ れている日本を代表する疫学研究)によると、血液の塊が脳血管に詰まって引き起こされる血栓性脳梗塞が起こる相対危険度を、高コレステロール血症とメタボ リックシンドロームのどちらでもない人を1倍とした場合、メタボリックシンドロームのみ存在する場合は1.65倍、高コレステロール血症のみ存在する場合 は1.63倍なのに対し、メタボリックシンドロームと高コレステロール血症が合併して存在する場合の相対危険度は、3.28倍と倍増しています。また、狭 心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患が起こる相対危険度は、高コレステロール血症、メタボリックシンドロームのどちらでもない人を1倍とした場合、高コレス テロール血症のみ存在する場合は1.96倍なのに対し、メタボリックシンドロームは、単独で存在する場合でも3.01倍と高い値を示しました。さらに、メ タボリックシンドロームと高コレステロール血症が合併して存在する場合の相対危険度は、3.7倍と上昇しました。メタボリックシンドロームの存在は、虚血 性心疾患に対して、強い悪影響を及ぼしていると考えられます。

男女で虚血性心疾患の発症に差

 興味深いのは、男性と女性の差です。久山町研究によると、脳梗塞の発症に関しての相対危険度は、メタボリックシンドロームのない場合の危険度を1倍とし た場合、メタボリックシンドロームを有する男性が1.7倍、女性が1.8倍と、男女間に差は認められませんでした。しかし、虚血性心疾患の発症に関しての 相対危険度は、メタボリックシンドロームを有する男性で1.9倍なのに対し、女性では2.9倍と、明らかに上昇しています。女性は、特にメタボリックシン ドロームに注意しなければなりません。さらに、近い血縁者が虚血性心疾患を発症している、閉経後の女性がメタボリックシンドロームと診断された場合は要注 意です。

肥満のない人でも注意が必要

 これまで、メタボリックシンドロームの危険性に関してお話してきました。肥満のない方は、他人事のように気が緩んではいませんか? 腹囲が基準値未満の 方は、血圧や血糖、脂質が異常でもメタボリックシンドロームと診断されません。それでは、肥満のない方は、循環器疾患による死亡の危険度が少ないのでしょ うか? これに警鐘を鳴らすデータが2007年にNIPPON DATA90をもとに発表されました。BMI25以上の肥満者とBMI25未満の非肥満者に分けて10年間追跡したところ、高血圧症、高血糖、高中性脂肪 血症、低HDLコレステロール血症(善玉コレステロールが低い)の4項目のうち、3項目以上合併した場合、循環器疾患によって死亡する相対危険度は、肥満 者の2・37倍に対して、非肥満者は2.83倍と、むしろ高値を示しました。つまり、肥満のない方も、健康寿命を延ばすためには、高血圧症、高血糖、高中 性脂肪血症、低HDLコレステロール血症などの危険因子の一つ一つを注意深くコントロールし、治療目標を達成し維持していかなければならないことが示され ました。

喫煙によって高まるリスク

 NIPPON DATA90では、肥満と喫煙に関しても興味深いデータが示されています。メタボリックシンドロームのある男性の循環器疾患によるすべて の死亡のうち、喫煙によって引き起こされる死亡の割合(集団寄与危険割合)は7%でしたが、メタボリックシンドロームのない男性においては41%に達して いました。また、肥満の喫煙男性では9%、非肥満の喫煙男性では37%と、非肥満男性で喫煙が関連して引き起こされる死亡のリスクが、肥満喫煙男性よりも 高いことが示されました。「肥満がないから安心」ではなかったのです。

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 次回からは、血圧や血糖、脂質異常など、個別の疾患に関して、お話してまいります。
2月号より