8020から6028へ

 
あなたの笑顔    元気をサポート
 みなさんの笑顔と元気をサポートする「健康ジャーナル」。塩田博文歯科(棚倉町)の塩田博文先生が担当する歯の健康シリーズのスタートです。
8020から6028へ
歯科医師 塩田 博文先生
1980年に神奈川歯科大学を卒業。同年、故郷の棚倉町に塩田博文歯科を開く。95~96年、日本歯科医師会生涯研修セミナー「無歯顎の臨床」講師。2002年より塩田義塾塾長。「実際的総義歯づくり」(わかば出版)、「歯が痛くない時読む本」(砂書房)など著書多数。
 
 8020(ハチマルニイマル)という言葉はけっこう浸透して80歳で20本の歯を残そうという、つまり80歳になっても自分の歯を20本以上残そうという運動であることを多くの方々が知っています。
75歳以上の4割近くが目標達成
 運動がスタートした時点(平成元年)では80歳で4本の歯しか残っていないという現実でした。しかしながら、最近のデータでは10本を超えて10数本になっている様です。この四半世紀で大きく改善されたことになります。このことは、国民の歯に対する意識が高くなった証しとも思われます。
 しかし、歯の寿命が延びただけでなく、いわゆる長寿社会つまり高齢者全体も増えていますので、8020を達成していない高齢者も増加傾向にあります。
 平成23年歯科疾患実態調査では後期高齢者の37%が達成していると示されております。でも、前述しました様に、高齢者の絶対数が増えていますので、この問題を考えなければなりません。
無くなってしまった歯は補える
 さて、この20というのは自分の歯で食べられるために必要な歯の数を意味しております。歯の本数と食品を噛む能力は、だいたい20本以上が残っていればほとんどの食品が満足に噛めるようです。
 ただここで、歯を喪失してしまった方は、取り返しのつかないことでもないことをお話させていただきます。
 きちっと歯を磨いて守ろうと努力をされていましても、体質的に歯が弱かったり歯槽膿漏(のうろう)で失うことはあります。それを責めることはもちろんできませんが、無くなってしまった歯を補うことは出来ます。
 義歯によって、ある程度の咀嚼(そしゃく)回復、つまりうまく食事をすることは可能です。義歯できちんと噛めている人は、健康状態が高いという調査結果もあります。
60歳で28本にしましょう
 さて6028(ロクマルニイハチ)に話を進めてみましょう。6028とは60歳で28本にしましょうということです。
 親知らずを除きますと歯の数は28本ですので、全部ということになってしまいますが...。
 60歳の還暦時に喪失しました歯を綴って、欠損つまり無くなったところにブリッジや義歯を入れましょうという運動を私は提唱しております。
 どうしてそういう考え方になったかというと、義歯を入れたがらない60歳前の方が結構いらっしゃいます。義歯は老いの証しみたいなところがありますので、気持ちは理解できます。しかしながら、60歳を超えてお病気などをしましたら、まったく義歯を受け入れられなくなってしまう方が結構いらっしゃるからです。したがってその前にということです。
 単に認知症うんぬんではなく、生理的に義歯を受け入れられなくなってしまいます。最初我慢して邪魔な義歯を入れるということが大きなハードルになってしまうことが多いのです。
60歳なら義歯を受け入れられる
 小さな義歯を早い時点で入れることで、それから少しずつ何年かかけて大きくする場合は、あまり苦労しないで受け入れることが出来る様です。
 70歳を超えていきなり総義歯を入れて成功したケースはほんのわずかですので、やはり無くても食べられると思っても義歯を入れるということが、多数歯の欠損になっても義歯が使えるということになります。
 そこで誰でも受け入れられる年齢ということで60歳還暦という時期に28本にしようという運動を提案したいのです。
 還暦のお祝いの時、歯を28本にしようというのが治療をさせていただく側の希望でもあります。
 成功というか、患者さんに満足していただき喜んでいただけるには60歳前と思うのです。どうかこのことを知っていただき、健康長寿のために頑張りましょう。
 
歯の健康を守り美味しく食べる
 健康長寿という意味では歯は大切ですし、歯がしっかりしていると病気にかかりにくく長生きできるという疫学調査の結果が出ております。
 QOL(クオリティ・オブ・ライフ)生活の質向上の意味でも歯は大切です。美味しく食べるということは、生活を充実させる上では大切なことです。
 歯の健康を守り美味しく食べるということは、人生を楽しく過ごす上でとても重要なことです。
 8020運動はもちろん意義のあることですが、6028運動をする、つまり60歳の時、失ってしまった歯を補い、無くなった欠損を無くすことが長寿社会においてはポイントです。
2月号より