歯ごたえと美味しさ

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 みなさんの笑顔と元気をサポートする「健康ジャーナル」。塩田博文歯科(棚倉町)の塩田博文先生が担当する歯の健康シリーズのスタートです。
歯ごたえと美味しさ
歯科医師 塩田 博文先生
1980年に神奈川歯科大学を卒業。同年、故郷の棚倉町に塩田博文歯科を開く。95~96年、日本歯科医師会生涯研修セミナー「無歯顎の臨床」講師。2002年より塩田義塾塾長。「実際的総義歯づくり」(わかば出版)、「歯が痛くない時読む本」(砂書房)など著書多数。
 

 歯がないと噛みきれない。噛みきれないと飲み込めない。喉に引っかかったらえらいことになる-。ということで歯は大切で、摂食嚥下するうえでなくてはならないという「物?」なのだということになります。

ご存じですか?「嚥下食」

 皆さん、あまり知らない言葉と思いますが、「嚥下食」というのが、介護や医療の関係者なら誰でも知っている用語としてあります。簡単に説明しますと、飲み込みやすく作られた流動食といったところです。この嚥下食という言葉を辞書で調べましても引くことができないので、一般用語ではないようです。

  一方、「嚥下障害」という言葉は一番最初に書かれていて、その内容は水分や固形物を飲み込んでの機能の障害、口腔から咽頭・食道の病気や脳疾患、神経筋疾患などで生じるとあります。

 この内容ですと、なんとなく一般の方でも理解できますが、いずれにしても医学辞典で調べますと、専門家である私共としても、ある種頭が痛くなる説明です。

 この中で、いわゆる脳出血が原因で嚥下障害を引き起こすことが多いとされていることがわかります。嚥下障害によって肺炎等の問題を引き起こすことは周知されていますが、うまく飲み込めないと食べられないのですから、そのことによって当然、栄養障害つまり低栄養状態になってしまいます。

 栄養摂取という意味では、とにかく飲み込めるようにということになってしまい、前述の「嚥下食」という言葉が使われるようになったと思われます。

食べたい欲求に加え美味しさも

 食べたい、食べようという欲は生命維持をするうえで最も大切な生理です。神はこの食べたいという思いを"お腹が空く"という感覚で私たちに知らせているのだろうと思います。ただ、このことについて人間は特にそうなのですが、単にエネルギーの摂取だけにとどまらず、美味しいというキーワードが関係しています。

 このことは食を考えるうえで大切なポイントであるとともに、神のプレゼントのように私は考えております。食べることは楽しみで、それは生きるのには栄養を取らなければいけない。栄養を取るというのは食べることなのです。

 しかし、お腹が空かなければ食べない。お腹が空くというのが若い頃は誰でもそうで、お昼が待ち遠しく楽しみでした。それがだんだん年を取ると...。

難しい「美味しい」の定義づけ

 さて、「美味しい」というのは何なのかについて書いてみたいと思います。これは簡単のようで難しいことに気付かされます。美味しいというのは、人によってそれぞれで、同じ方でもその時々、あるいは若い頃は好きだったけど年を取ったらそうでもなくなったということもあるので、好みも含めて「美味しい」を定義づけるのはやはり難しいようです。

 最近読みました本に、美味しさの「ヒミツ」は食感にあった!という、歯ごたえと美味しさの関係性について書かれてありましたので、その内容を紹介させていただきます。

 一般的に、のびた麺より歯ごたえのあるシコシコ麺を美味しいと感じる人は多いはず。硬いフランスパンを好み、リンゴは丸かじりのほうが良く、美味しさは味だけでなく歯ごたえが関係していることが考えられます。

 少し硬さとは関係ない話になりますが、どうして2日目のカレーが美味しく感じるのかを科学的に証明するという内容を読みましたら、長時間煮込むことによってジャガイモなどが溶け出して粘性が上がり、とろみがつくことがのどごしになり、美味しくなる|という結論でした。

 美味しさととろみについては関係も深いことがわかりました。しかしながら、多くの食品はよく噛まずに丸飲みしてしまうと香りを感じることもできず、味がわからなくなってしまいます。やはり美味しいを定義するのは難しいのですが、いずれにしても食感というのは「噛む」ことが非常に重要で、経験的には「歯ってとっても大事なのです」ということで締めくくらせていただきます。

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 1年間このコーナーを書かせていただき、私も勉強になったと感謝申し上げます。また、毎号励ましのお手紙等をくださいましてとてもうれしく思いました。  ありがとうございました。

12月号より