脳卒中について。その11

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 みなさんの笑顔と元気をサポートする「健康ジャーナル」。公立藤田総合病院(国見町)副院長で脳神経外科医の佐藤晶宏先生のお話です。
脳卒中について。その11
公立藤田総合病院
佐藤昌宏先生
福島県立医科大学医学部大学院卒、医学博士号を取得。同大学附属病院から総合南東北病院、福島赤十字病院、原町市立病院等にて勤務し1996(平成8)年4月から公立藤田総合病院脳神経外科、2008年4月より同病院副院長。専門は脳血管障害の診断と外科治療。日本脳神経外科学会専門医・指導医、福島県立医科大学医学部臨床教授。
 
 

      

 今回は不幸にして脳卒中になった後に行うリハビリテーション(リハビリ)についてお話します。

 1.リハビリテーションって何?

 リハビリ医学では、さまざまな障害にアプローチし、患者さんのより良い生活を一緒に目指します。リハビリテーション(rehabilitation)とは、直訳すれば「再適応」という意味です。すなわち「身体的のみならず精神的、社会的など総合的な観点から、病気や障害を受けた患者さんが、正常な生活を営むための能力を獲得するために行う治療および訓練」というのがリハビリの概念です。そのために、筋電図・神経伝導検査、歩行分析などの物理医学的診断法を用いながら、適切な障害の診断、機能回復の予測を行います。さらに薬の処方や運動療法、物理療法、作業療法、言語療法、義肢・装具の作製などを行います。十分な診断・評価のもとに、患者さんに効率の良いリハビリ・プログラムを提供して、個々の患者さんの身体機能を最大限に伸ばし、日常生活の自立度(自分で行えること)を向上させ、脳血管障害の患者さんがより質の高い生活を営むことができるようにします。

 2.脳卒中による障害(図1)

 脳卒中による身体機能障害は意識障害、認知症、失語症、失認、失行、抑うつなどの認知障害、嚥下障害、眼球運動障害、構音障害などの脳神経障害、片麻痺、運動失調などの運動障害、さらにしびれ、痛みなどの感覚障害、便秘、失禁などの自律神経障害と、極めて多種多様です。脳の損傷部位によりこれらの症状が組み合わさって出現するので、症状が全く同じという患者さんは一人もいないと言ってもよいほどです。さらに初期治療に時間がかかり、長期間の臥床を強いられると、関節拘縮や筋萎縮といった使わないことによる運動障害、すなわち廃用症候群が加わり、症状はさらに複雑になります。型どおりのリハビリテーション治療ではうまくいかず、一人一人の患者さんに最も適したオーダーメードの治療プログラムが必要となります。

 3.リハビリテーションの目的 

 リハビリテーションの目的は、次の3点を柱にします。
脳の機能を最大限回復させる
 完全に回復できない場合もありますので、その時には
②残された機能を強化して日常生活の質の向上を目指す。
 そして機能を強化させるため
環境を整える。

 必要な物品をそろえたり、住宅改修などを行ったりするなどがこれに当たります。もちろん患者さんによって病状や後遺症も違いますので、目標は違います。

4.リハビリテーションの流れ(図2)

  一般に脳卒中後リハビリは、急性期、回復期、維持期に分けられます。医師による機能評価、目標設定、疾病管理、リスク管理、リハビリ治療計画、リハビリ処方に基づき、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、薬剤師、栄養士、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士、義肢装具士などがそれぞれの専門性を発揮し、できるだけ速やかに患者さんの最大の能力を引き出すべく効率的に行われるようにします。まさにチーム医療の代表です。

 急性期(発症直後から数週間)

 発症直後の治療と並行して、体の機能低下を最小限に抑えるリハビリが行われた結果、上半身を起こして座っていられる程度に回復するまでの期間を急性期と言います。この期間の日数は症状の重さによって異なります。ごく軽度では数日程度のこともありますが、1~2週間から数週間程度のことが多く、個人差があります。脳血管障害が重症の場合、発症直後に起きた意識障害が長期間続くことがあります。発症直後に医療機関を受診した時から、治療とともにリハビリを始めるという考え方が主流です。リハビリ開始が早ければ早いほど回復状況が良いことが知られています。容態が安定していれば、最も早い場合で発症当日から開始されます。意識がほとんどなく自分から動けない場合でも、筋肉や関節の機能低下を防ぐため、ベッド上で関節を動かす運動など、リハビリの第一歩が始まります。

 回復期(数週間から数か月)

 入院中の医療施設または専門のリハビリ施設などで本格的、集中的なリハビリが行われた結果、日常生活に必要な動作や機能が回復するまでの期間を回復期と言います。日数は症状の重症度によって異なりますが、数週間の人もいれば数か月以上かかる人もいます。

 維持期(数か月から半年以降)

 自宅や施設などに行って、回復期に取り戻した機能の維持を図り、日常生活の自立と社会復帰を目指す時期を維持期と言います。退院後も日常生活動作やそれを応用した動作などの訓練を自然に取り入れることが、機能の維持につながります。

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 次回はリハビリテーションの具体例についてです。

月号より