先天性代謝異常症を診断
先天性代謝異常症を診断するマススクリーニング検査は、なじみのない方が多いかと思いますが、実は病院などで出生するほとんどの赤ちゃんはこの検査を受けています。もちろん保護者の方の同意によりますが、その費用は公費負担で無料です。
方法は日齢4〜6日に赤ちゃんのかかとから採血、ろ紙に吸い取らせて検体とします。その結果、異常があれば直ちに保護者あてに通知されることになります。
それでは、この先天性代謝異常症とはどんな病気かといいますと、生体内のある物質からほかのある物質に変わっていく時に、それを仲介する酵素という代謝の働きをするものがありますが、何かの関係でその酵素が生まれつき欠損していたり、働きが弱かったりした場合、ある物質が異常にたまって、それが害となって赤ちゃんの発育や発達を遅らせたりすることがあるのです。
たとえばフェニールケトン尿症の場合、アミノ酸の一種であるフェニールアラニンをチロシンに変換する酵素が働かないため、フェニールアラニンが体内、特に赤ちゃんの脳に蓄積して、それが長く続くと痙攣(けいれん)発作や知能障害を起こしてくるのです。
このような酵素の数はたくさんあって、その数だけ代謝異常はあることになりますが、国は特に早期発見により治療の可能な疾患について、マススクリーニングによる検査を行っているわけです。
本県では現在、フェニールケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ガラクトース血症、先天性副腎過形成症、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)の6疾患を対象に実施中です。
幸い日本人では極めて発症数の少ない病気ですが、早期発見により適切な治療を行えば、子どもの発達障害や知能の遅れを防ぐことが可能ですので、この検査はぜひ受けさせてください。(県医師会員)