天王柿新たな一歩 会津美里で6年ぶり出荷再開、風評に負けぬ

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6年ぶりに京都府へ出荷される柿渋の原料「天王柿」=7日午後、会津美里町の共選場

 会津美里町で生産されている天王(てんのう)柿の出荷が7日、6年ぶりに再開された。天王柿は染料や健康食品として使われる「柿渋」の原料として、京都府の製造・販売業者三桝嘉七(みますかしち)商店に出荷されていたが、原発事故の影響で取引が途絶えていた。出荷再開を目指して農地の手入れを続けてきた農家は、念願の出荷の日を迎え、つやつやとした緑色の天王柿を同町の共選場に運び入れた。

 天王柿は、1989(平成元)年に国の減反政策による休耕地対策として、同町に植栽された。ゴルフボールほどの小ぶりの渋柿で、タンニンを多く含むのが特徴。約30戸の農家でつくる会津高田天王柿生産組合が生産を担い、100トンを目標に順調に収量を増やしていた。

 しかし原発事故で状況は一変。同社が買い付けを中止すると、天王柿の販路が絶たれた。放射線量を測定すると検出限界値以下だったが、買い手はつかなかった。それでも、農地の手入れを怠れば木の生産力は衰えてしまう。農家は東京電力の賠償金を受けながら、農地の消毒や剪定(せんてい)を続けた。福田三郎組合長(63)は「手入れした実を捨てるのは本当に悔しかった」と視線を落とす。高齢などの理由で栽培を諦める農家もいた。

 「このままでは生産地が再起不能になる」。現状を知った三桝嘉七商店は、天王柿の安全性に理解を示し、取引先に事情を説明。柿渋の購入先を徐々に増やし、同町やJAの協力もあったことから、原発事故から5年を迎えて買い付けを再開した。植栽時から関わりを持つ三桝武男同社会長(84)は「生産者や町の熱意に応えたかった。風評が完全になくなったわけではないが、今後もわれわれがしっかり確認した安全性を伝えていく」と話す。

 出荷に当たり、農家25人全員が放射性物質検査を行い、検出限界値以下であることを確認した。出荷量は約30トンになる見込み。福田組合長は「一生懸命作ったものを収穫できるのはうれしい。さらに質のいい柿を作っていきたい」と意気込んだ。出荷は今月半ばまで行われる。

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