甲状腺検査どうあるべきか 武部氏、「無実のがん」見つけている

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 たけべ こうじ 香川県坂出市出身。東北大医学部卒。香川県立がん検診センターなどを経て1997(平成9)年開業。60歳。

 県民健康調査検討委員会の会合が14日に福島市で開かれる。会合では、甲状腺検査の今後の在り方を巡り議論が行われる見通しだ。東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から5年半が過ぎ、今後の検査はどうあるべきか。香川県のがん検診センターで過去に1万人以上の大人の甲状腺を調べた経験を持つ武部晃司医師と、県民健康調査検討委で甲状腺検査評価部会員を務める西美和医師に聞いた。

 ◆武部晃司氏 たけべ乳腺外科クリニック院長(高松市)

 甲状腺検査を続ければ(原発事故に伴う被ばくとは関係がない)「潜在がん」がさらに見つかるだろう。検査を長期にわたって続けることは弊害が大きい。

 1990(平成2)年から5年間、香川県立がん検診センターで、乳がん検診に合わせて超音波を用いて甲状腺がん検診を行った。対象は女性1万1189人。検診を始めた当初、3ミリの乳頭がんが対象者全体の3.5%という高い割合で見つかった。1センチ以上に限っても0.9%いた。

 「日本人の甲状腺に、大変なことが起こっているんじゃないか」と最初は思った。だが検診を続けるうちに「潜在がんを見つけ過ぎている」と確信するに至り、このことを論文にまとめた。

 甲状腺は超音波検査に適しており、細い針を使った細胞診にも適している。つまり、甲状腺の乳頭がんは他の臓器のがんと比べて見つけやすい。

 無症状で見つかる小さな甲状腺がんは、患者の一生になんら悪い影響を与えないままであることが多い。私は、論文でこうしたがんを「無実のがん」と名付けた。

 早く警鐘を鳴らさないと、見つける必要がないがんを見つけてどんどん手術する時代が来てしまうかもしれない―。論文を発表した際は、そんな危惧があった。

 甲状腺がんは死亡するケースが少ない上、小児甲状腺がんは成人と比べても予後(病状の見通し)が良い。症状が出てから治療しても治ることが多い。「がんは早期発見が大事」と一般の人が考えるのは当然だが、がん検診はそもそも、死亡率を下げることが目的。韓国や米国では近年、小さな甲状腺がんを見つけてどんどん手術したが、死亡率は変わらず、問題になっている。甲状腺は絶対にがん検診を行ってはいけない臓器だ。

 当時行った検診は大人が対象だったが、10代でも潜在がんは一定割合見つかるだろうという推論は持っていた。福島の甲状腺検査で見つかったがんの数は、その推論と矛盾しない。被ばくの影響ではないと思う。

 チェルノブイリ原発事故と比べ、福島の原発事故に伴う被ばく線量ははるかに少ない。この事実だけでも甲状腺検査をやめる理由になると思うが、一番の問題は、福島の子ども全員を対象とした検診を続けることで、子どもたちに「原発事故後、自分は危ない環境に置かれることになったのだ」という誤った印象を抱かせてしまうこと。このことを非常に危惧している。

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