【ふくしま産業革命】スペシャリストに聞く サイバーダイン社長・山海嘉之氏

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さんかい・よしゆき 岡山市出身。筑波大大学院工学研究科博士課程を経て、同大学院システム情報工学研究科教授、同大サイバニクス研究センター長などを歴任。サイバーダインでロボットスーツ「HAL(ハル)」の開発などを手掛けてきた。58歳。

 テクノロジーが進化していく中で本県の産業は今後どうあるべきか。ロボット開発や再生可能エネルギー関連産業など最前線にいる第一人者や企業の代表に現状と今後の課題を聞いた。

 『郡山の拠点』本格稼働へ

 医療・福祉用ロボットの開発に取り組むサイバーダイン(茨城県つくば市)の山海嘉之社長は、郡山市に整備した「次世代型多目的ロボット化生産拠点」について、今年中に本格稼働したい意向を示した。

 山海社長は生産拠点について「時間をかけても世界にアピールできるような拠点に仕上げたい」と意欲を示す。熟練者の技能が組み込まれたロボットと人が協調しながら新たなロボットなどを生産する先進的な仕組みづくりを目指す。山海社長は「次の時代の生産を展開する仕組み、技術をつくり上げたい。福島を単にものをつくる場というより、ものをつくり出す仕組みを生み出す場にしたい」と話す。

 本県の産業振興に向けて、独自性のある産業をつくる必要性を強調。「(高水準の設備を備える)ふくしま医療機器開発支援センターを積極的に活用し、福島県が自分たちの産業を生み出していく。事例を積み重ねながら貢献したい」と述べ、郡山市の同センターを核にした医療関連産業振興の重要性を強調した。

 また、イノベーション・コースト構想については「福島県が復興に向け、どういう県であり続けるかという問いに対する大きな挑戦。できることは、とことん協力したい」と構想実現を支援する考えを示した。

 「未来都市」のモデルに

 ―昨年8月、郡山市に完成した「次世代型多目的ロボット化生産拠点」の現状と、今後の見通しは。
 「研究開発メンバーが入り、既に研究を始めている。今後のロボット生産に向けて福島県でチャレンジしていることは、決まったルーチン業務で生産するロボット工場ではなく、熟練者と研究開発者が手探りで工夫しながら新たなものをつくり、その技能がロボットに受け継がれるような仕組みづくりだ。あえて工場とせず、生産のあるべき姿をつくり出す場所として、進化し続ける生産拠点にしたい」

 ―地元企業との連携は進んでいるか。
 「ロボットスーツHAL(ハル)をつくるのに必要な金属加工系、電子基板などの部材の調達について、県内企業との連携を強化して進めている。いくつかの部材は非常に品質が高く、福島県の企業を選んで非常に良かったと思っている。実直に取り組む人が県内にたくさんいることが反映されているのかもしれない」

 現場の声に応える

 ―ハルは県内の介護施設でも試験導入されている。現状をどう評価する。
 「介護支援用のハルは県内21施設で使用されている。県を挙げて医療やロボット開発、導入に力を入れていることもあり、どこよりも早く展開することを心掛け、いつも最優先して進めたいと考えている。神奈川県では、ハルを導入した施設の約8割で離職率の低下につながったというデータもある。改良はこれからも続けていく。現場の声にどんどん応え、現場に良い形で使ってもらえるようにしたい」

 ―人工知能(AI)の医療・介護分野での実用化の見通しは。
 「医療、介護など次世代のロボットを含む最新のテクノロジーにAIが入り込み、私たちを支援してくれるものになると考える。AIは、例えば介護が必要な状態になりにくい条件など、私たちが気付かなかった相関関係や因果関係を示してくれる。また、日常の健康管理に使うバイタルセンサー(動脈硬化・心電計)の分野では、得られた生体情報を病院と家庭、職場間で共有、それをAIが解析・処理し、生活改善のための提案をしてくれる段階まで達するのではないか」

 広がっていく概念

 ―AIやIoT(モノのインターネット)などを活用した「第4次産業革命」の実現に向けては。
 「第4次産業革命の概念は、工業やものづくりに限らず、もっと広がっていくと思う。日本では政府が、世界に先駆けた超スマート社会実現に向けた取り組みとして『ソサエティー5.0』という考えを打ち出した。私たちのサイバニクスという新領域開拓の方式をかなり参考にしたのではないか。サイバニクスをベースに、ソサエティー5.0を実現したい。日本が単に生産という産業面だけでなく、克服すべき社会課題を乗り越えた社会をつくるという役割を果たせると思う」

 ―本県の産業振興に、どういう形で貢献する。
 「『未来のあるべき姿はこんな街だ』というようなまちづくりを展開したい。つくば市(茨城県)に『サイバニックシティー』をつくろうと考えているが、福島県には福島県のまちづくりが必要だと考える。新しいテクノロジーが投入され、福島で生み出されるものが世界に輸出できるようになるなら、そのために一生懸命考えて貢献したい」