【農の挑戦】南郷トマト生産・吉津紘二さん 若手就農に手厚い支援

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きつ・こうじ 只見町出身。福島大人間発達文化学類卒。卒業後、町内の南郷トマト生産農家で3年間のアルバイト生活を送る中で就農に関心を持ち、1年間の本格研修に移った。2014(平成26)年に就農。知人から借りた町内の畑19アールで生産を開始し、年々収穫量を増やしている。31歳。

 農家の高齢化や担い手不足が深刻化する中、南会津特産の南郷トマトに関心を持ち、就農する若い世代が増えている。就農4年目の吉津(きつ)紘二さん(31)=只見町=は「生産技術と補助の両面で(生産組合やJA、行政による)手厚い支援態勢が整っており、農業未経験者でも参入しやすい」と理由を挙げる。(聞き手・南会津支局長 辺見祐介)

 未経験者の参入後押し

 ―生産面ではどのような支援を受けられる。
 「特徴的なのは、栽培方法がマニュアル化されていること。苗が根を張るまでの間に与える水の量や肥料の回数、病気への対処法など、先輩農家の経験や知恵が詰まった資料を共有できる。独立前の就農希望者を対象にした1年ほどの地元農家研修でも学ぶ内容だが、紙に記されていると心強い。県やJAの職員が定期的に営農指導に訪れ、作業の改善点に関する助言や病気の有無を確認してくれるなど就農後のサポートも万全だ。新人農家でも、大きな失敗をせずに生産できる仕組みが整っている」

 ―補助制度の内容は。
 「若手が就農する際に最初の難関となるのは巨額な初期費用。ただ南郷トマトが振興作物の只見町は、新規就農者に対して『町に10年以上住む』などを条件に初期費用の全額を補助している。私もパイプハウスや苗に水をまく機械など栽培に必要な設備を用意するのに1000万円近くかかる見込みだったが、補助で賄うことができた。正直、こうした手厚い補助制度がなければ就農は難しかったかもしれない」

 後継者育成に高い意識

 ―首都圏などから移り住む「Iターン」で就農する人も多い。
 「もともとIターン就農者の多くは南郷スキー場の常連客だった。冬場にスキー場で働く地元農家と交流を深める中で就農支援の内容を知り、夏はトマト栽培、冬はウインタースポーツを楽しむという生活スタイルに魅力を感じて就農するケースが多い。スキー場は農家にとっては農閑期の働き口であり、後継者の確保にもつながる。地域で大切にしていきたい」

 ―若手農家の貢献もあり昨年の出荷額は過去最高の10億6200万円を突破した。
 「産地のさらなる振興に向け、若手を後継者としてきちんと育てようという意識の高さが、過去最高出荷額の達成につながったのではないか。先輩農家は自身の成功や失敗を含め、経験した全てを新人農家に惜しむことなく教えてくれる。私の19アールの畑の収穫量は、就農1年目の22トンから2年目は23トン、3年目の昨年は28トンまで増えた。私と同じく先輩のアドバイスのおかげで収穫量が増えた若手も多い」

 ―トマト生産の課題は。 
 「人口減少が進む中、労働力の確保が課題だ。特にトマトの収穫時期の作業は時間との勝負で、人手が必要になる。地元出身の私でさえもパート探しに苦労する。親戚もいないIターン就農者は、なおさら大変だ。農作業体験ツアーなどを通じて都市部の退職者や大学生に産地への関心を高めてもらい、手伝いに来てもらえるような仕組みを構築できればいい」

 ―産地振興に向けて実行したいアイデアはあるか。
 「トマトは糖度ばかりが注目されがちだが、甘みと酸味とのバランス、香り、水分含有量、歯ごたえなどもおいしさを判断する上で重要。こうした糖度以外の要素も数値化して目に見える形で示せれば、ファン層の拡大につながると思う」