【農の挑戦】JA福島五連会長・大橋信夫さん 「本県は安全」発信強化

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おおはし・のぶお 伊達市(旧梁川町)出身。福島農蚕高(現福島明成高)卒。JA伊達みらい(現ふくしま未来)組合長、JA福島五連副会長を歴任し、2014(平成26)年6月に五連会長に就任。全国のJAなどが出資する国内唯一の農業専門日刊紙「日本農業新聞」の会長を16年6月から務めている。69歳。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの農業復興に向け、県内農協をリードするJA福島五連会長の大橋信夫さん(69)は「産地情報の発信などリスクコミュニケーションを強化していく」と述べ、風評対策をさらに推進する姿勢を示した。(聞き手・社長・編集主幹 五阿弥宏安)

 国主導での風評対策を

 ―風評を実感するのはどのような時か。
 「十分に売れる農畜産物なのに単価が上がらない。『福島の農畜産物は仕入れるな』という業者もいるようだ。消費者庁の調査では、食品に含まれる放射性物質濃度が基準値以内であっても『受け入れられない』と回答した消費者が2割に上り、その傾向は大きくなっている。中国や香港、台湾などの輸入規制も続いたままだ」

 ―本県農業の課題は。
 「少子高齢化による農業の担い手の減少が進み、全国平均と比べても深刻な状況になっている。根強く残る風評被害の影響で農畜産物の価格や農業所得も低迷し、農業基盤の脆弱(ぜいじゃく)化が震災以降に大きく進んだ」

 ―国と県、JAグループ福島による「県産農林水産物の風評払拭(ふっしょく)対策協議会」が今月設置された。風評払拭にどう取り組む。
 「リスクコミュニケーションの強化へ、協議会の構成機関や消費者団体などと一層の連携を図りたい。ただ国内外の信頼を回復するには、国ももっと『福島県は安全、安心なんだ』と発信することが重要だ。国が主導して風評の実態調査や対策に取り組んでほしい」

 集落営農支え地方創生

 ―風評払拭(ふっしょく)に向け、国や県はGAP(農業生産工程管理)の第三者認証の取得支援に力を入れる。JAとしての取り組みは。
 「認証の取得は、農林水産省自体が難しい取り組みだと認めており、生産者やJAの中でどれだけ取得できるのか心配もある。ただ、認証を取得して2020年東京五輪・パラリンピックに県産農畜産物を提供できれば、生産者の励みになる。本県産の農畜産物が安全なことを世界に認めてもらう好機ともなる。県内のJAと県連の指導員や担当者を対象にした研修会、JAの生産部会による先進事例視察などを通してGAPを学び、認証取得に挑戦したい」

 ―津波被災地や避難地域の農業の現状は。
 「相双で再開が進むコメの作付面積約4700ヘクタールのうち、半分を占める約2300ヘクタールが飼料用米など非主食用米だ。主食用米からの転換はコメ余りを防ぐために大切な取り組みで、営農再開した生産者の理解をいただき、生産調整(減反)に取り組んでいる」

 ―営農再開をどう支援し、加速させる。
 「農業機械や施設の導入支援、さらには農作業を請け負う組織づくり、販売支援などを関係機関と連携して進めたい。農林中央金庫の『農業所得増大・地域活性化応援プログラム』県域企画事業を活用しながら、新規就農の促進や経営体、営農指導員の育成などを応援していきたい」

 ―地方創生で重要な意味を持つ中山間地域の農業振興をどう進める。
 「中山間地域で営農を続け、地域や農業を守っていく担い手として鍵を握るのは集落営農組織だ。法人化を見据えた営農ビジョンや事業計画づくり、資金繰りへの対応や税務指導など、経営支援などを強化していきたい」