【農の挑戦】農業女子・渡部佳菜子さん 『食の関心』アイデアに

  このエントリーをはてなブックマークに追加 
わたなべ・かなこ 西会津町出身。県農業短期大学校卒。地元で就農する年に震災と原発事故が発生。各地で県産農作物の魅力や安全性を発信している。2014(平成26)年1月からは「めごい菜農園」を経営、同町のミネラル野菜の普及にも取り組む。25歳。

 農林水産省は、女性農業者と企業が連携した商品開発などを支援する「農業女子プロジェクト」を進めている。県内でも女性農業者の動きが活発化し、独自の視点を生かした新市場の開拓や若い就農者の増加が期待される。西会津町でミネラル野菜を生産する渡部佳菜子さん(25)は「女性の方が食や農業に対する関心が高い。斬新なアイデアを生み出せれば」と語る。(聞き手・喜多方支社 鈴木健人)

 独自の視点...市場開拓へ

 ―農業の仕事は肉体的にきついイメージがある。
 「機械もあるので、女性だからできないという仕事ではない。夫婦で就農している割合が高いのではないか。女性農業者の有志団体に入れば、情報交換やストレス発散などもできる」

 ―就農6年目となるが、生産者として心掛けていることは。
 「ただ農産物を生産するだけでなく、互いの顔が見える販売を目指している。消費者が生産者のことを知りたがるのと同じで、生産者も消費者のことを知りたい。市場販売は安定的に収入が得られる一方で消費者の顔が見えにくく、新たな農業の形を模索している」

 ―具体的なアイデアは。
 「市民が参加できる収穫体験の充実やCSA(地域支援型農業) の導入に取り組みたい。農家は天候によって左右される職業なので、その不安が解消される仕組み。農家のファンづくりになり、支援者も新鮮な野菜を受け取ることができる。ウィンウィンの関係ではないか。CSAは日本が発祥地とされているが、現在では欧米の方が盛んになっている」

 もっと経営者の視点を 

 ―就農時に震災、原発事故が発生した。
 「『福島県の農作物は取引できない』と言われ、不安の中で農業をスタートさせた。キュウリは通常1本30円ほどだが、10円前後しか値が付かなかった。復興イベントの会場では県産農作物が敬遠され、放射能検査で安全性が認められていても関係なかった。ただ、我慢強く前に進んできたことで、他の生産者とのつながりが生まれ、自分にとって大きな経験になった」

 ―若手の女性農業者として活躍している。
 「今までは流れに身を任せていただけ。年齢を重ねるに連れて『いつまでも新人気分ではいられない』という気持ちが強くなっている。農業の分野で一体何を表現するべきか、西会津町や本県の農作物をPRするために自分が引っ張っていくべきか模索している」

 ―農家の改善点は。
 「もっと経営者の視点が必要だと思う。採算が取れないと農家は成り立たない。環太平洋連携協定(TPP)への加入を想定して一歩先にさまざまな戦略を描いている農家もいる。農協に販売を任せっきりにしてどんぶり勘定にならないよう、自立した販路開拓を心掛けている。安定的な供給も重要だ」

 ―消費者に伝えたいことは。
 「『野菜が高い』と言われ、同じ300円でも菓子を優先的に購入する人がいる。しかし、まずは現場を見てほしい。農家は全て天候に左右されるもの。昨年は9月中旬に気温が下がり、曇天続きでキャベツの生育が悪かった。種をまくタイミングが難しく、経験値を積み上げるしかない。何十年やっても失敗するときがある。実際に畑に足を運んでもらい、生産者と消費者の認識の差を埋めていきたい。量ではなく、心身が満たされる高品質の野菜作りを目指したい」