【農の挑戦】福島大教授・小山良太さん 産地戦略、本県の急務

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こやま・りょうた 東京都出身。北海道大大学院農学研究科を経て、2005(平成17)年に福島大経済経営学類准教授、14年に教授。19年春開設予定の食農学類(仮称)の設置準備を進める同大農学系教育研究組織設置準備室の副室長。42歳。

 農業再生への研究、教育活動に取り組む福島大経済経営学類の小山良太教授(42)=農業経済学=は「震災から約6年たった今、県産農産物が直面している問題はもはや風評被害ではない。産地としての福島の地位が低いまま市場で固定化してしまっている」と指摘、市場での評価を高めるための産地戦略と流通戦略が急務だ、と語った。(聞き手・報道部 須田絢一)

 市場低評価、固定化恐れ

 ―県産農産物の現状は。
 「厳しい検査体制が構築され、安全性は確立された。『福島は危ない』という人はごく一部。ではなぜいまだに価格が安いか。これは、原発事故を境に流通構造が変わって今も戻らないためだ。全国から仕入れる業者にとって、福島は『低位の産地』という位置付けで固定化してしまった。6年もたてば、原発事故前に福島が築いていた産地としての地位をそもそも知らない業者もいる。こうなるともはや風評の問題ではない」

 ―求められる対策は何か。
 「県産米に県がお墨付きを与えて高い品質を保つ仕組みをつくるなど、本県を新しい産地として外部に発信するくらいの取り組みが必要だ。行政は風評払拭(ふっしょく)イベントに注力するのではなく、産地戦略こそ進めるべきだ」

 農業従事者、自前で養成

 ―震災、原発事故を境に、県産農産物の市場での地位はどのように変わってしまったのか。
 「取引業者は原発事故直後、放射性物質の問題から市場に出回らなかった本県産の農産物の代わりに他の産地との取引を始めた。6年たった今、本県産に取引を戻すというのは、業者にとって新しい産地と取引を始めることと同じであり、簡単ではない。問題は肉とコメだ。東京都中央卸売市場の和牛枝肉価格を見ると、本県は原発事故を境に全国平均より50円高い産地から450円低い産地に変わってしまった。本県のコメは業務用米の割合が急増した。原発事故により、強制的に市場の取引構造が変更されてしまった」

 ―求められる新しい産地づくりとは。
 「『後発の産地』になってしまったという現実を受け止める必要がある。その上で新しい産地、新しいブランドとして売り出していくべきだ。以前は評価が低かった北海道米だが、『ゆめぴりか』を出したことで高い人気を得るようになった。全国展開している山形県のブランド米『つや姫』は行政の厳しい品質管理が前提となっている。こうした産地は関係者の努力で、コメどころの新潟県と並び評される水準にまで到達した。本県にも潜在能力がある。厳格に取り組まれている全量全袋検査は放射性物質を検査するいわば『ネガティブ(後ろ向き)チェック』だが、この仕組みを品質保持のための『ポジティブ(前向き)チェック』に移行してはどうか」

 ―福島大は食農学類(仮称)開設への準備を進めている。
 「コンピューター制御でトラクターを動かすなど農業はこれから、IT(情報技術)の時代となり、流通の仕組みも変わるだろう。新しい産地づくりを進めるには若い世代が不可欠だが、原発事故で多くの人材が県外に流出してしまった。農業従事者が外から来てくれるのを期待するのではなく、自前で養成できなければ本県の農業の未来はない」