作業員の姿「アニメで描かないと」 浅尾芳宣さんが第1原発視察

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4号機原子炉建屋付近を視察する浅尾さん

 東京電力福島第1原発事故から丸6年となるのを前に、アニメ制作会社「福島ガイナックス」(三春町)社長の浅尾芳宣さん(47)=福島市出身=は、福島民友新聞社の取材班と共に第1原発を初めて視察した。「未来に向かって肯定的に行動する人たちの姿を描かないといけない」。廃炉の最前線に触れた浅尾さんは、難題に果敢に挑む現場の息遣いをアニメで発信していきたいとの意欲を強めた。

 事故から6年を迎える第1原発。半面マスクと防護服姿の浅尾さんは、まず5号機の原子炉格納容器内に足を踏み入れ、海抜35メートルの高台から80メートル先にそびえる1~4号機と向き合った。

 ◆モニュメント

 カバーが外され、爆発で建屋が吹き飛んだ無残な姿をさらした1号機。周囲には巨大なクレーンが並び、遠隔操作でがれきの撤去作業が進められている。「復興への思いがあっても現実に残っている。一つのモニュメントのようだ」。人類が挑戦する象徴に思えた。

 バスに乗って構内を回ると汚染水を保管するタンクが林立し、汚染水対策などの土木工事に汗を流す作業員が目に飛び込んできた。「(土木工事といった)昔のものから、最先端のロボットなど今の技術までが組み合わせられているのがすごい」。思わず息をのんだ。

 6年前より環境改善が着実に進んだ一方、溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しに向けた準備作業など今後たどるべき道をどう選び取るのか。時間軸が交錯していると感じた。「手が届きそうなのに届かない。だから諦め切れない」

 ◆創作意欲

 現場で浮かび上がったのは人間の姿だ。「慎重を期さないと、次の危険があるという現場で大変な仕事をしている人たちの気合と忍耐を感じた」。原子力の専門技術者、重機の操縦士、土木・建築作業員、食堂で配膳する女性たち。第1原発で働く1日当たり約6千人全てに与えられた役割があり、花形の職業はない。そうした人を描きたい。創作意欲がかき立てられた。

 浜通りの産業再生の柱となる福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想をアピールするため、アニメの制作を検討しており、その中で廃炉も取り上げたいと考える。子どもの興味を引くアニメは保護者の世代にも伝わる訴求力があるからだ。「次世代を担う子どもたちが進むべき道を考えるとき、アニメに接したことで廃炉について思い出してほしい」

 視察には福島さくら遊楽舎館長でガイナックス京都(京都市)社長の武田康広さん(59)も参加した。