『富岡えびすこ市場』25日閉店 店長、古里でホテル開業へ決断

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25日の閉店を前にお客と談笑する渡辺さん(中央)

 東京電力福島第1原発事故で全町避難する富岡町民たちの憩いの場として親しまれてきた大玉村の「富岡えびすこ市場」が25日、閉店する。週1回、郡山市の仮設住宅での移動販売も継続してきた。店長の渡辺吏さん(57)は「ぽっかりと心に穴が空きそうだが、節目として前に進みたい」と話す。今後は町内でビジネスホテルの10月オープンを目指し、新たな道へ進む。

 「富岡えびすこ市場」は富岡町商工会や企業が出資して、大玉村の安達太良応急仮設住宅前に2012(平成24)年2月開設し、野菜や総菜、日用品などを販売している。

 震災前、JR富岡駅前で食料品店を営んでいた渡辺さんに声が掛かり、店長を任された。震災の津波で自身の店舗は全壊した。現在は須賀川市のアパートから毎日約40分かけて店に通う日々を送り、「震災前と同じ仕事ができるのが幸せ」と話す。

 閉店は4月1日に帰還困難区域を除いて避難指示が解除される町の状況や店舗脇の町仮設診療所の閉所を受けて決断した。仮設住宅での移動販売も終了する。

 終了決定後、移動販売のたびに「なんだべ、あと何回来てくれんだ。寂しくなるなぁ」と多くの町民から声を掛けられるようになった。自身の決断に複雑な気持ちにはなるが、「次のステージに向けて取り組みたい」と前を向く。

 渡辺さんは4月から町とともに次の道へ進む。仲間たちと古里で何かできないかと考え、帰還した同町でのホテル経営を行う新会社「富岡ホテル」を設立した。渡辺さんは社長を務める。

 ホテル開業に向け、自分たちが古里で生きていくために行う事業が「復興のシンボル」と言われることに、当初は違和感も覚えた。ただ、最近になって町を盛り上げることも自分たちの役割だと考えも変わった。

 新会社の役員には震災前から地域で事業を行っていた各業種の個人経営者が名を連ねる。渡辺さんは「事業が結果的に復興につながるならいい。町内でのお祭り開催など、民間ならではのソフト事業にも取り組んでいきたい」と意気込む。