作者・島田明宏さんインタビュー 小説「絆~走れ奇跡の子馬」

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しまだ・あきひろ 1964(昭和39)年札幌市生まれ。早大政治経済学部中退。大学在学中から放送作家、フリーライターとして執筆活動を始める。競馬を中心に名馬物語や人物ドキュメント、エッセーなどを執筆。著書に「『武豊』の瞬間」「消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡」など多数。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で大きな被害を受けた南相馬市。同市を舞台に、小さな生産牧場で震災の日に生まれた子馬が競走馬を目指していく小説「絆~走れ奇跡の子馬」(集英社)が全国の書店などで販売されている。作者の島田明宏さん(52)=東京都=に執筆の経緯や、南相馬への思いなどを聞いた。

 南相馬への思い『集大成』

 ―南相馬との縁は。
 「震災の翌月ごろから、『被災地』『被災者』に続いて、『被災馬』という言葉を聞くようになった。競馬関連の原稿を書くことが多いので、調べてみたら被災馬は浜通りに集中していた。そして、ほとんどが相馬野馬追に出場する馬だった。野馬追に出場する馬は9割以上が元競走馬だということも初めて知った。被災馬の現状や相馬野馬追などを伝える記事を書くため、たびたび相双に足を運ぶようになった」

 ―今回の小説を書くきっかけは。
 「2011(平成23)年の相馬野馬追を訪れた時、若い騎馬武者の遺影を抱いた同年代の男性を見た。その男性、蒔田保夫さんに話を聞いたところ、毎年ともに野馬追に出場していた長男匠馬(しょうま)君(の遺影)だと知った。その後、私の記事を読んだ蒔田さんが改めて、匠馬君が生きた証しを残したいと話をしてくれた。相馬地方は独自の馬事文化を築き上げてきた。そこを舞台に、匠馬君のような若者を主人公にした物語にしようと書き始めた」

 ―震災で何を感じたか。
 「震災の年に初めて野馬追で南相馬を訪れたが、『また来なくてはいけない』と思った場所だった。震災がないのが一番だが、蒔田さんと友人ではない人生、野馬追を知らない人生というのは考えられない。震災を経験して仕事への考え方が変わった。特に作品への反響というのを意識するようになった」

 ―作品に込めた思いは。
 「いろいろな人たちと知り合った6年間の集大成となる作品で、評価がすごく怖い。人生は一人で乗り切れるものではないかもしれないが、でも一緒に生きていける人がいる。南相馬に通ううちに、そういった人たちと出会った。作品には私の好きな南相馬や南相馬の人たちが登場する」