飯舘に帰郷...老舗うどん店「ゑびす庵」 常連さんら満面の笑み

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店の再開を告げるのれんをかける高橋さん

 飯舘村飯樋の老舗うどん店「ゑびす庵」が23日、同村の店舗で営業を再開させた。避難指示解除後、村内の飲食店の再開は初めてで、店主の高橋ちよ子さん(68)は「誰も気を使わないわが家のような存在にしたい」と話す。温かいうどんとおもてなしで、復興へ歩みを進める村民の胃袋と心を満たしていく。

 「いらっしゃいませ!」。約6年ぶりに飯舘村内の店に高橋さんの声が響いた。「早速来たよ! おめでとう」。「ゑびす庵」ののれんをくぐる「常連さん」たちの姿に、高橋さんは喜びを隠さない。常連たちもつられて満面の笑みだ。

 人気メニューの「肉うどん」や「五目うどん」が次々に注文されると、店内は一気に活気づく。湯気を立てて運ばれてくるうどんを勢いよくすする常連の姿に、高橋さんは目を細める。「ここに戻ってきて良かった」

 1953(昭和28)年に開店した店は現在、高橋さん、夫の義治さん(70)、次男の均さん(43)で切り盛りする。震災後、避難先の福島市で営業を続けたが「地元の飯舘村に戻ってゆっくりと営業したい」という義治さんの決意を尊重、村内での営業を決断した。

 店は再開させたが、義治さんは「帰村率が1割程度の場所では本当は商売にならない」と明かす。しかし、採算度外視の営業再開の裏側には、店が震災前と同じように、村民が気兼ねなく立ち寄れる憩いの場所になってほしいという願いが込められている。

 午後3時。閉店を迎え「何とか終わったなー」と厨房(ちゅうぼう)から均さんの声が漏れる。初日の売り上げは約50食。「こんなに来てもらえるとは思わなかった」と感慨深げだ。高橋さんも「あっという間だったね」と充実感に浸った。

 常連たちも再開を喜んだ。

 五目うどんを食べた、同村上飯樋行政区長の赤石沢正信さん(67)は「よそでは味わえないこの味がやっぱり好きだ」とひと言。福島市の店に通っていたという川俣町の広野ユキ子さん(67)は「絶対にまた来たい」と話した。

 村ににぎわいが戻ることを願い、新たな挑戦をスタートさせた親子3人。「一日無事に終わって一安心。でもこれからだ」

 ゑびす庵の営業時間は午前11時~午後3時。夜間は予約のみ。火曜日は休み。住所は飯舘村飯樋字町101。