帰還高齢者増で「人材確保」難題 相双の介護サービス確立に苦慮

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 東京電力福島第1原発事故の避難指示解除で住民の帰還が本格化する中、相双地方で古里に戻った高齢者の生活を支える介護福祉サービスの確保が思うように進んでいない。帰還の条件として医療と並び介護福祉の充実を挙げる人は多いが、現場には慢性的な担い手不足が重くのし掛かり、解消は容易ではない。県や市町村にはスピード感と持久力を持った人材確保という難題が突き付けられている。

 ◆◇◇震災前の半分

 「帰還した高齢者が安心して生活できるよう気軽にリフレッシュできる場を提供するのが役割だ」。帰還困難区域を除く避難指示が解除された富岡町で21日、6年ぶりに再開した通所介護事業所「舘山荘デイサービスセンターもとまち」。佐藤和彦所長(57)は期待の大きさを肌で感じている。

 再開に向け、震災前からのスタッフを中心に7人を確保したものの、十分ではなく、受け入れ可能な利用者数は震災前の半分に当たる15人がやっとだ。

 ◇◆◇「特効薬」ならず

 県は、避難指示が出た地域で将来的に、帰還した人の半数を高齢者が占めるとみている。急速な高齢化に呼応し、介護ニーズが増加の一途をたどるのは避けられない。避難指示が出た12市町村の特別養護老人ホーム9施設のうち、再開したのは5施設(1施設は休止せず現地で運営を継続)で、4施設が避難元の自治体に戻った。再開を検討する施設もあるが、職員確保の難しさが心配されている。

 福島労働局によると、介護職員の有効求人倍率は県全体、相双地方とも震災前より上昇。県は介護職員の確保に向け、家賃補助や就労支援金、修学資金の貸し付けなどの支援制度を打ち出したが、「特効薬」となっていないのが現状だ。

 ◇◇◆厳しい経営

 昨年4月から入所者の受け入れを再開した楢葉町の特別養護老人ホーム「リリー園」。1年が経過したが、厳しい経営を余儀なくされている。東電からの財物損害への賠償金を切り崩して赤字を穴埋めし、急場をしのいでいる。

 経営を圧迫しているのが少ない入所者数。震災前は80~90人が入所していたが、現在は4分の1の21人。県外にも職員の採用枠を広げて確保に努めてきたが、いまだ半分以下の29人にとどまり、入所希望のニーズに対応できない。

 約20人の高齢者が入所を希望しており、永山初弥施設長(68)は「待機者を一刻も早く受け入れたいが、思うように職員が集まらない」と苦しい胸の内を語る。

 県は「介護職員の不足は県全体の課題。すぐに効果が出るわけではなく、長期的に取り組む必要がある」(社会福祉課)とするが、現場から有効な打開策を急ぐよう求める声が上がる。

 永山施設長は決意を込めて言う。「古里に戻りたい人がいる以上、採算が厳しいからといって事業をやめるという選択肢はない」。本年度中に経営安定化への方向性を見いだす方針だ。