富岡・避難指示解除から「1カ月」 客足が途切れぬ商業施設

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買い物をする住民の姿が見られるヨークベニマル新富岡店=富岡町・さくらモールとみおか

 東京電力福島第1原発事故に伴う居住制限、避難指示解除準備両区域の避難指示が、浪江町、川俣町山木屋、飯舘村、富岡町で解除されてから1カ月が経過する。帰還の動きはいまだ鈍く、住民が避難を強いられた6年という時間の長さを突き付ける。一方で、故郷の復興、生活再建に向けた人々の新たな営みが始まった。直面する現実や課題の先に、将来の希望を見いだそうとしている。

 富岡町小浜の国道6号沿いにある公設民営の複合商業施設「さくらモールとみおか」は、避難指示解除より一足早い3月30日に全面オープンした。震災、原発事故後、双葉郡で開業した最大のショッピングモール。その一日を見つめると、来店者や買い物客、施設の従業員の姿を通して町の現状が浮かび上がってくる。

 まだ空気が暖まっていない午前7時すぎ、フードコートにある弁当店「おふくろフード」の女性従業員が車で1時間30分以上かけて避難先のいわき市から通勤してきた。職場に着くと、女性はすぐに仕込み作業を始めた。

 正午になると、320台分ある広い駐車場の8~9割近くが埋まり、おふくろフードなど地元3店舗が並ぶフードコートは昼食を取る作業員らでごった返す。坂本栄司店長(62)は町役場の本格再開と避難指示解除で利用者の伸びを実感する一人。作業員だけでなく、一般の住民の姿も少しずつ目にするようになった。「人が戻るまで時間はかかるが、町民が立ち寄れる場所ができた効果は大きい」

 子ども連れの親も

 時計の針が午後2時30分を過ぎたころ、作業員の姿は落ち着き、中高年層を中心とした住民の買い物客が増え始める。中には子ども連れの母親の姿も。ただ、先に帰還が始まった近隣の楢葉、広野、川内3町村からの利用客が目立つようだ。中核テナント、ヨークベニマル新富岡店の渡辺利彦店長(48)は「生鮮食品の売れ行きが予想を上回った。潜在的なニーズは高い」と手応えをつかむ。

 午後6時には帰宅途中の作業員らが訪れ、ヨークベニマルのレジに長い列ができる。当初はセルフ式だけだったが、店は急きょ有人レジ2台を導入した。1時間後の閉店まで客足が途切れることはない。

 「これから光増える」

 辺りが闇に包まれた午後8時すぎ、まばゆい光を放っていたさくらモールが消灯した。近くには3月末に完成した町内初の災害公営住宅50戸が立ち並ぶものの、室内から漏れる明かりはまばら。大型連休中に引っ越しをする人がいるため、入居者は増える見込みだ。食料品の買い出しを終えた地元・龍台寺の矢内俊道住職(81)は町の1カ月を振り返り、こう話した。「日中、布団を干す家が見られるようになった。光が増えるのはこれからだ」