「土湯温泉」定住策に収益還元 地元企業、バスの定期代無料へ

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バス停のある土湯温泉街中心部

 福島市・土湯温泉で温泉熱を利用した発電事業などを行う元気アップつちゆ(加藤勝一社長)は1日から、地域の高齢者と高校生を対象にバス定期券の支給を始める。高齢、子育て世帯に優しい温泉街をアピールすることで同温泉街への定住、移住促進を図る。

 元気アップつちゆは地元資本の民間企業で従業員はわずか7人。小規模事業者が単独で交通費の家計負担軽減策を打ち出すことは珍しく、新たな地域おこしの取り組みとして注目を集めそうだ。

 家族6人、公共交通機関利用料だけで毎月4万6800円かかるとしたら―。温泉街のある土湯温泉町は世帯数約240、人口約450人、高齢化率47%、地元の土湯小の児童は8人。人口減少を食い止め、増加を図るには、転出をなくし、転入を増やすことが求められている。しかし、同町中心部から同市中心部までは約16キロあり、交通費の家計負担が定住・移住促進を阻む課題となっている。市中心部のJR福島駅までは路線バスがあるが、往復料金は大人1人1680円で、週5回通ったとすると月3万3600円かかる。

 65歳以上の高齢者や高校生には割引制度があるが、それでも夫と妻が70歳の父母、高校生2人を扶養する6人家族を想定すると、定期代だけで毎月4万6800円かかる計算になる。

 市は75歳以上の高齢者に無料のバス乗車券を配布しているほか、中学生は通学のバス代がかからないなど、交通弱者の救済策は以前からあった。ただ、70歳以上の高齢者や高校生は救済策の恩恵が薄かった。

 同社の支援策では、70~74歳の高齢者と、高校生に1年間使用できるバス定期券を支給する。同社によると、同町に住む70~74歳の高齢者は23人、高校生は8人。支援総額は最大で約300万円となるが、費用は全て売電事業の収益金から捻出する。

 同町に住む自営業阿部ヒロ子さん(74)は「夫の車以外、移動手段がなかったので助かる」と話す。加藤社長は「土湯に住みたいという人が一人でも増えれば」と先を見据え、「温泉という地域資源で得た収益を、より良いまちにするために活用したい」と語った。