子どもの貧困...『生き抜く力』養う 専門部署設置の東京・足立区

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「生き抜く力」を養う取り組みを続ける足立区。秋生(左)は部署間の連携を目指し、職員の意識改革に力を入れる

 全国で子どもの貧困が深刻化する中、専門部署を設け役所一丸で貧困対策に取り組む自治体がある。人口約68万人の東京・足立区は、幼児教育で子どもの「生き抜く力」を養い、貧困の連鎖解消につなげようと試みる。区が施策や各部署の調整役を担う専門部署「子どもの貧困対策担当部」を設置して約2年。役所の「本気度」は住民に広がり、地域で子どもを支えようとの機運が高まっている。本県の子どもの貧困対策の道標ともなる取り組みに迫った。

 東京・足立区の公立保育所。机の上に置かれたホットプレートに、園児と保育士がレンコンやニンジンを並べる。幼少期から野菜を焼いて食べることを教えようと、区がホットプレートを購入した。食育だけでなく「生き抜く力」を養う意味もある。「将来、親に何かあったとき、食事を作れるようになってほしい」。子どもの貧困対策担当部長の秋生修一郎(61)は思いを明かした。

 足立区が昨年行った調査で、生活が困難な世帯とそうでない世帯の小学2年生を比べた場合、生活が困難な世帯の児童の方が「逆境を乗り越える力」が弱いとの結果が出た。運動や読書などの体験を通じて生き抜く力を培おうと、区は幼児教育を含めた子どもの貧困対策に取り組む。その中心にあるのが子どもの貧困対策担当部だ。

 部署間の連携が乏しいため「縦割り」とやゆされがちな役所に、横串を通すのが役目。貧困対策の推進を職員に意識付け、時にはハッパを掛ける。秋生は「子どもの貧困対策に特効薬はない。まだまだこれから」と気を引き締める。

 「意識改革」住民も協力

 足立区は克服しなければならない課題に直面していた。刑法犯の認知件数が東京23区で最多。小、中学校の学力テストの結果は低迷し、健康面では介護なしに自立して生活できる健康寿命が都平均より2歳短かった。改善を進める中、いずれの課題も根底にあるものが同じだと気付く。課題解決の本丸は、親の経済状態が子どもに影響する「貧困の連鎖」を断つことだった。

 2015(平成27)年度に貧困の連鎖解消に向けた実施計画を作り、職員の意識改革を徹底した。今では職員から「販売イベントで余った野菜を活用できないか」と声が掛かるようになった。熱意は住民に伝わり、JAや区内の市場で食材を仕入れている業者から、子ども食堂への食材提供の話が寄せられる。「大変なんだろ。根菜や鶏肉を持っていくかい」。秋生は、民間から民間へと協力者を広めていくのも自分たちの役目だと再確認した。

 「貧乏と貧困は違う」。秋生の言葉に、貧困は経済的な問題だけではないとの思いがにじむ。社会からの孤立や教育環境など複雑な要因が絡んでおり、役所や地域が一体となることが必要だと強調する。成果も見えてきた中、秋生はこう話した。「(貧困対策について)職員の固まった意識を取り払うには(専門部署を)設置した方がいい。でも本当は、私たちのような組織がなくなるのが一番いい」(敬称略)