「失われた日常取り戻す」 再び花開け!葛尾でコチョウラン栽培

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苗をチェックする杉下さん。コチョウランを通した農業復興の取り組みが始まった=12日、葛尾村

 葛尾村の農家などでつくる農業法人「かつらお胡蝶蘭(こちょうらん)合同会社」は12日、村内のビニールハウスでコチョウランの栽培を開始した。東京の市場などに贈答用として出荷し、産地振興を狙う。東日本大震災と原発事故から6年10カ月が経過。「農業が盛んだった村の日常を取り戻す」。村の農業の復興へ大きな一歩を踏み出した。

 コチョウランを栽培するビニールハウスでは同日、台湾など海外から輸入されたコチョウランの苗の点検作業が行われた。順調に生育しているか、輸送中に傷んでないか―。社員らが一つ一つ丁寧に確認し、苗鉢を日当たりの良い場所に次々と並べた。

 同社の杉下博澄さん(36)は「品質の良い苗ばかり。出荷時には人の背丈ほどになる」と、期待を膨らませた。

 杉下さんは同村出身。高校卒業後、農業の道を志し農業系の短大で花の栽培を学んだ。しかし県内の一般企業に就職。サラリーマン生活を送る中、東京電力福島第1原発事故が発生し、村は全村避難を余儀なくされた。「古里の役に立ちたい」。もやもやした気持ちが続いた。

 一昨年、村の大半の避難指示が解除された。葛尾でコチョウランを栽培すると、知り合いの村民から計画を聞いた。杉下さんは「素直にいいなと思えた」という。村のためにできることを探していた自らにとって、美しい花の栽培の話は願っていたそのものだった。会社設立に合わせ、一念発起して脱サラし、諦めかけていた農業の世界に飛び込んだ。

 念願のコチョウラン栽培が始まり、「安定した品質のものを出荷し、生産地としての実績を積みたい。震災で失われた、葛尾の農業の日常を取り戻す」と杉下さんは言葉に力を込めた。