被災街並みジオラマで再現 新地・釣師地区、心の復興つなげて

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「心の復興につながってほしい」とジオラマの制作を進める川上さん(右)と吉本さん

 新地町は、東日本大震災の津波でほぼ全ての家屋が流失した釣師地区の街並みを未来に残そうと、被災町民らと共にジオラマで再現する取り組みを開始した。震災から6年10カ月を経たが、つらい記憶が残る沿岸部に今も近づけない被災者も多い。関係者は「心の復興につながってほしい」と取り組みに期待する。

 釣師地区は町東部に位置し、震災前は海水浴場や漁港があった海沿いの集落。町によると当時約160世帯あり、津波で多くの犠牲が出た。現在は大部分が防災緑地として再生が進められており主要施設は2018年度末に完成する予定。

 町は心の面での復興と被害の風化防止を図ろうと事業を企画した。地元で同様のジオラマ制作に携わった石巻専修大(宮城県石巻市)の協力を得て、震災前の測量データを基に3Dプリンターでパーツを作製。地区住民や町民に参加を呼び掛け、ジオラマ制作を行っている。ジオラマは実際の500分の1のサイズで、縦1メートル、横1.8メートル。一部に釣師地区の砂も使用する。

 新地町復興推進課の吉本幸弘さん(56)は「少しでも被災者の心の復興につながってほしい」と訴えた。

 「いつか思い出話を」

 「最初に事業の話を聞いた時は怖かった。写真で見るのもつらい。でも形に残せるのであれば残したい」。震災前に釣師地区に住んでいた町復興推進課コミュニティ支援員の川上照美さん(42)は、事業を担当する心情を明かす。

 震災前は自宅でネイルサロンを営んでいた。震災当日は夫の亮さん(41)と宮城県に出掛けており、帰り道で津波に遭ったが難を逃れた。

 だが、自宅は流され、亮さんの祖母や知人らを亡くし「間に合わなかった」という気持ちも残る。パーツを手に取った時は涙が出たというが「作業を進める中で、再現されるうれしさも感じた。心の復興の扉が少しずつ開いているかもしれない」と話す。

 「今でも沿岸部に近寄れない人は大勢いる。ジオラマを直視できるタイミングは人それぞれかもしれない。いつか街並みを見ながら思い出話ができたらいいな」と作業を進めている。