【みんゆう県民大賞・芸術文化賞】 モルゴーア・クァルテット

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結成25周年記念コンサートではプログレの大作に挑んだメンバー=2017年6月、福島市音楽堂

 第28回みんゆう県民大賞(福島民友新聞社主催)の受賞が決まった芸術文化賞のモルゴーア・クァルテット、スポーツ賞の聖光学院高野球部監督斎藤智也さん(54)=福島市、ふるさと創生賞の福島高スーパーサイエンス部。受賞に至ったそれぞれの取り組みを紹介する。表彰式は6月4日、福島市の福島民友新聞社で行われる。

 演奏の幅広げ支持拡大 クラシックからプログレ

 「ショスタコービッチを演奏してみないか」

 日本を代表する弦楽四重奏団「モルゴーア・クァルテット」の誕生はメンバーのビオラ奏者小野富士(ひさし)さん(福島市出身、NHK交響楽団)の一言がきっかけだった。

 ショスタコービッチ(1906~75年)は知る人ぞ知る旧ソ連の作曲家。15曲の弦楽四重奏曲を残している。提案された、旧知のバイオリン奏者荒井英治さん(日本センチュリー交響楽団首席客演コンサートマスター)は「やりましょう」と即答した。小野さんは当時知らなかったが荒井さんも少年時代からショスタコービッチの大ファンだった。

 小野さんと、第1バイオリンに荒井さん、第2バイオリンに青木高志さん(国立音楽大准教授)、チェロに藤森亮一さん(N響首席チェロ奏者)を迎えた4人で1992(平成4)年秋、弦楽四重奏団が誕生した。モルゴーアはエスペラント語で「明日の」を意味する。小野さんの友人に命名してもらった。「地味だけど変な感じがする名前。活動の方向性と一致していて気に入った」と小野さんは振り返る。

 翌93年から定期演奏会をスタートさせ、福島公演も同年から開始。古典も演奏したが、あまり知られていない現代音楽の割合が多かった。「知らない曲でも楽しんでくれる福島の皆さんに本当に感謝している」

 2001年1月の第14回定期演奏会でショスタコービッチ全15曲を完奏。弦楽四重奏団として当初の目標を達成したが、同年4月に、第2バイオリンが青木さんから戸沢哲夫さん(東京シティ・フィルコンサートマスター)に代わり、その後も勢いは止まらなかった。06年のショスタコービッチ生誕100年を記念した演奏会では、3日間で一気に全15曲を演奏した。

 演奏の幅はイエスやエマーソン・レイク&パーマー(ELP)などのプログレッシブ・ロック(前衛的なロックのジャンルの一つ)へと広がった。プログレマニアである荒井さんが編曲を手掛け、プログレの代表曲を収めたアルバム「21世紀の精神正常者たち」(12年)を発表。クラシックファンとロックファンの両方から絶大な支持を受けた。

 「過去の例ではロックの弦楽四重奏だと"軽音楽"になる。ところが私たちの演奏は本気だから、ロック好きの人に大変喜ばれた」と小野さんは話す。クラシックを普段聴かない人もコンサートに来るようになり、ロックの専門誌に登場することもあった。

 福島公演は毎年続けているが、東日本大震災のあった11年6月は休止に。その代わり、メンバーの希望により福島市内3カ所で被災者慰問コンサートを企画した。「私たち自身が音楽の力を改めて感じることができた。素晴らしい経験だった」

 結成25周年の昨年に第47回JXTG音楽賞(東燃ゼネラル音楽賞から改称)の洋楽部門本賞を受賞。小野さんは「福島の人に支えられたおかげで演奏を続けることができた」と感謝の言葉を口にする。「この路線を続けて、これからも皆さんを楽しませたい」

 モルゴーア・クァルテット 第1バイオリンの荒井英治さん、第2バイオリンの戸沢哲夫さん、ビオラの小野富士さん、チェロの藤森亮一さんによる弦楽四重奏団。1992(平成4)年に結成され、翌93年から定期演奏会を開催。98年に「村松賞」、2011年に「アリオン賞」、16年に「佐川吉男音楽賞 奨励賞」、17年に「JXTG音楽賞 洋楽部門本賞」受賞。最新アルバムはプログレのカバーアルバム第3弾の「トリビュートロジー」(17年)。