【みんゆう県民大賞・ふるさと創生賞】 福島高スーパーサイエンス部

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「社会に役立つ人材を目指す」と熱意あふれる福島高スーパーサイエンス部

 第28回みんゆう県民大賞(福島民友新聞社主催)の受賞が決まった芸術文化賞のモルゴーア・クァルテット、スポーツ賞の聖光学院高野球部監督斎藤智也さん(54)=福島市、ふるさと創生賞の福島高スーパーサイエンス部。受賞に至ったそれぞれの取り組みを紹介する。表彰式は6月4日、福島市の福島民友新聞社で行われる。

 未来を担う人材育成へ 復興の視点取り入れ活動

 信夫山の麓に位置する福島高(福島市)のスーパーサイエンス(SS)部。放課後、活動している教室を訪ねると、生徒たちが研究テーマごとに分かれ、活発に議論していた。3年生を中心に話を聞くと「社会に役立つ人材を目指す」との共通の熱意があふれていた。まさに「清らかであれ 勉励せよ 世のためたれ」という校是を体現しているようだ。

 創部12年目を迎えたSS部。先進的な科学技術や理数系教育、大学・研究機関との連携を通じ、未来を担う国際的な科学技術人材の育成につなげている。

 現在、部員たちが取り組む研究テーマは生物、物理、化学、地学、情報各分野の13種と多彩だ。部長を務める3年の古山翔太さん(17)は「高校生から福島の発展をけん引できるよう頑張りたい」と地域貢献への思いを語る。

 研究の一例を挙げると、風力発電の発電効率の向上、次世代技術と期待されるマグネシウム電池、信夫山の形成過程の推測、学習に役立つソフトウエア開発、ウーパールーパーの変態―など多岐にわたる。フレッシュな視点と思考で本県の可能性を広げているといえる。特に震災や原発事故後は、本県が抱える課題を逆手に取り、復興の視点を取り入れた活動を展開している。

 原発事故が契機の研究では、県内外での放射線量の比較に取り組んだ。国内外の200人以上の線量を調査し、本県と大きな違いはないと結論付けた。論文は英国物理学会の論文誌に掲載されて反響を呼んだ。研究だけでなく外部に広く情報を発信して、実態と違って捉えられがちな本県の姿を正確に伝える役割を担っている。

 放射線量の研究を通し、東京電力福島第1原発の実態を目にしてみようと、2016(平成28)年に同原発の廃炉・汚染水対策の現場を視察した。18歳未満の視察としては原発事故後初めてだった。部員は本県復興への思いが強い。

 エネルギー問題に関心を高めている3年の沖野峻也さん(17)は「大学では持続可能なエネルギーを研究したい」と意気込む。

 地域活性化への取り組みも活発だ。代表的な取り組みは、魚の成育に適した「好適環境水」を使ったニホンウナギの養殖の研究。好適環境水で育つ魚は体内の浸透圧を調整するエネルギーを成長に充てることができ、成長が早まるとされる。SS部の実験でも、ニホンウナギの成長が早まったことを確認している。

 土湯温泉の温泉熱を活用した養殖の研究にも注力した。現在は本県の特産品として復興に活用できないか模索している。ニホンウナギの養殖を研究している3年の西沢亮輔さん(17)は「社会や世の中を変えるような取り組みをもっと考えていきたい」と向上心を見せた。

 「学力だけでなく、表現力や創造性、完遂力、国際性なども身に付けさせるのが狙い。日本の将来を担う人材の輩出を支えていきたい」と語るのは、SS部を指導する細谷弘樹教諭(45)。福島高の看板となったSS部。次期部長で2年の安斎優希さん(16)は「先輩方の伝統をしっかりと受け継ぐ。活動を通して進路を明確にし、復興や福島に寄与したい」と力強く語った。

 福島高スーパーサイエンス部 2007(平成19)年度に福島高が文部科学省から「スーパーサイエンスハイスクール」の指定を受けたのを機に設立。先進的な学習で科学的能力や思考を培い、社会をリードする科学技術人材を育成している。部員はグループに分かれてそれぞれ設定した研究テーマに取り組んでおり、化学グランプリや生物学オリンピックなど数々のコンテストに出場し、上位入賞を果たしている。創部12年目を迎える本年度、1年生63人、2年生36人、3年生38人の計137人が所属している。