【全国植樹祭・未来の森へ】津波被災地の希望 古里復興のシンボル

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全国植樹祭や関連事業に向けて苗木を守る防風柵が設置された式典会場の隣接地。高田さん(右)と上原さんはクロマツの苗木を手に期待を抱く

 海岸保安林再生を誓う

 「一番大きいのは被災地の現状が全国に伝わることだ」。南相馬市原町区雫(しどけ)地区の高田俊忠さん(68)は穏やか浜風を受けながら、地元で開かれる「全国植樹祭」への思いを明かす。「毎日期待が膨らむ」。潮風から苗木を守る防風柵が設置されるなど急ピッチで準備作業が進められる会場を見つめ、高田さんは言葉を続けた。

 全国植樹祭の記念式典が行われる雫地区では、東日本大震災の津波で25人が犠牲になった。式典会場内にも14軒ほどの民家が立ち並び、海岸保安林も広がっていた。

 地域の歴史に

 震災から7年が過ぎ、当時の面影はほとんど残っていないが、前雫区長の高田さんは全国植樹祭を古里の復興に向けたシンボルとして期待する。「天皇、皇后両陛下にありのままの景色を見ていただけることがありがたい。それは地域の歴史として語り継がれる」

 全国植樹祭に特別な思いを寄せる男性がもう一人いる。南相馬市原町区萱浜で4代続く苗木生産会社「上原樹苗」の社長、上原和直さん(38)だ。初代から浜通りの海岸保安林を手掛け、「津波で流された木には樹齢100年を超えるものもあった。うちの会社が再び整備を担うのは当たり前のこと」と自負する。

 雫地区から北に約2キロ離れた場所にある事務所や苗木の生産場もまた津波で大きな被害を受けた。着の身着のままで社員と一緒に避難した上原さんに残ったのは長靴一つ。それでも、震災の数日後には会社を再建して仕事を続けてきた。手塩にかけた苗木は全国植樹祭に採用された。

 千年に1度と言われる震災の津波は一瞬で人々の日常を奪った。本県の沿岸部では6割の海岸保安林が流失。復興に向け再整備が進められている。

 「命」の出発点

 全国植樹祭では、招待者が雫地区の4.6ヘクタールの土地にクロマツなどの苗木約2万本を植える。苗木が潮害や風害などを防ぐ役目を果たすまでには20~30年の歳月を要するというが、上原さんは木々が育つ歳月と共に生きるつもりだ。「手入れをしなければ、立派な森林にはならない。しっかり管理したい」。全国植樹祭は、未来への希望を紡ぐ「命」の出発点となる。

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 第69回全国植樹祭ふくしま2018は10日、天皇、皇后両陛下の臨席の下、南相馬市原町区雫地区で開かれる。全国から森林・林業関係者ら約6千人を迎え、緑豊かな古里再生を誓う時が迫る中、被災地の人々は震災から7年の歩みを振り返りながら、植樹祭に新たな希望を見いだす。