富岡の老舗「大原本店」、町文化財に 帰還住民ら集う場へ

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町文化財に指定される見通しとなった大原本店の旧店舗。雨漏りを防ぐための工事の足場が組まれている。周囲の建物は解体が進む=2018年6月24日撮影

 震災前の町の姿を後世に―。福島県富岡町は、町中心部の中央商店街にある老舗の衣料品店「大原本店」の旧店舗を震災後初の町文化財に指定する方針を固めた。

 かつて住民の台所だった商店街の店舗の多くは長期にわたる住民の避難により解体が進んでおり、保存することで往時の名残をとどめる。

 文化財に指定後、旧店舗は帰還住民が自由に集えるコミュニティー再生の場として生まれ変わる予定だ。

 旧店舗は、1935(昭和10)年に建設され、中央商店街で最も古い建物。昭和初期のモダンな建築様式「看板建築」を取り入れた一部れんが造りの2階建てで、延べ床面積は約120平方メートル。内部の欄間に鳳凰(ほうおう)が彫られ、障子戸にも凝った細工が施されるなど意匠に富んでいる。

 中央商店街は、江戸時代に浜街道の宿駅としてにぎわった富岡宿の流れを受け継いで発展した。原発事故前は、町中心部を東西に走る県道沿い約500メートルにわたり精肉店や鮮魚店、雑貨屋など約60店舗が軒を連ね、住民の暮らしを支えていた。

 事故に伴う避難により、放置されるなどして劣化が進んだことで半数以上の店舗が取り壊され、かつての姿が消えつつある。

 旧店舗も震災で建物がゆがむなど被災した。店を営んでいた大原弘道さん(81)=現在は郡山市在住=も一時解体を考えたが、昭和初期の貴重な建物として町から保存の申し出があり、快く応じた。町は大原さんから無償で譲り受け、町文化財保護審議会に文化財への指定を諮問。今月中にも指定に賛同する答申が得られる見通しだ。

 修繕後の建物を町民に開放するほか、復興状況を発信する場や視察者の受付窓口としての活用を検討している。

 帰還困難区域を除く避難指示が解除されて1年以上が経過したが、町に戻った住民は震災前の人口の1割に満たない。大原さんは「商店街がどんどんさら地になる中、旧店舗が帰還した人や避難先で古里に思いをはせる人の心のよりどころになれば」と願った。