【森のささやきが聞こえますか】倉本聰の世界(下)点描画

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富岡町夜の森地区で桜の木をスケッチする倉本さん。木に語り掛けるように見つめ、ペンを走らせる=2017年9月

◆環境問題強い関心 

 「樹(き)に涙あり 樹に笑顔あり 樹に怒りあり 樹に履歴あり」  脚本家・倉本聰さん(83)が描き続ける点描画。細いペン先で無数の点を打った緻密な作品のモチーフは「木」だ。

 「年を重ねたボコボコの木肌や直角に曲がった幹は木の履歴書。この木はどんな人生を送ってきたのかと想像して描いている」。富良野や旅先で心ひかれた木を見つめ、木に語り掛け、スケッチブックにペンを走らせる。言葉を添えた点描画の作品は約600点を超えるまでになった。

 東京で生まれ育った倉本さんが環境問題に強い関心を抱くようになったのは1977(昭和52)年、シラカバなどの天然の木々に囲まれた北海道富良野市に移住してから。そして木の存在の大きさに気づいたのは、84年に開塾した「富良野塾」の2年目だった。

 倉本さんと塾生らはほぼ自給自足の生活を送っていたが、水道代わりの谷の湧き水、近隣の井戸が全て涸(か)れてしまった。原因を探ると、谷の上流部の広大な森で行われていた森林伐採だった。「空気(酸素)と水というヒトにとっての生命線を、森が支えてくれていた」

◆震災風化に警鐘

 富岡町夜の森地区で昨年9月、スケッチブックを開き、数々の桜の木と向き合う倉本さんの姿があった。同町は昨年4月、居住制限と避難指示解除準備両区域の避難指示が解除されたが、同地区の一部は人の立ち入りが制限される帰還困難区域のままだ。「桜のトンネル」として町民に愛された2.4キロ区間の約400本の桜の木の半分以上が同区域に入る。

 倉本さんは東日本大震災と東京電力福島第1原発事故以降、本県を何度も訪れ、被災者と直接語り合い、震災、原発事故の風化に警鐘を鳴らし続けている。「人が戻らぬこの街を、どう見ているのか」。避難を余儀なくされた住民の心を支えてきた桜の木と対峙(たいじ)し、倉本さんは静かにスケッチを続けた。

 「夜の森の桜を通して、伝えたいことがある」。完成した19点の点描画が今回初めて公開される。

■倉本聰の仕事と点描画展

■期間 7月15日(日)~8月31日(金)

■時間 午前10時~午後6時(最終日は午後4時)

■会場 とうほう・みんなの文化センター(県文化センター) 福島市春日町5の54

■入場料 一般1200円、中・高生600円、小学生以下無料

■問い合わせ 福島民友新聞社事業部(電話024・523・1334)へ。