【Jヴィレッジ再始動】「天然芝」輝き再び...風評克服への挑戦

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天然芝を管理する社員と談笑する後藤さん(左)。7年前は想像すらできなかった光景に心を躍らせる

 青々とした天然芝がピッチ一面に広がる。照り付ける日差しの中、軽快なエンジン音を鳴らす芝刈り機が近づくと、Jヴィレッジホテル事業グループ課長補佐の後藤朋久(51)の表情がほころんだ。「やっぱり、芝があってこそのJヴィレッジだな」。目の前の光景に心躍らせる後藤だが、7年前、こんな光景は想像すらできなかった。

 2011(平成23)年3月11日以降、東京電力福島第1原発まで約20キロに位置するJヴィレッジは、東日本大震災と原発事故で一変した。施設内は事故の収束作業に当たる東電や関連企業の社員らであふれ、少年たちがボールを追ったピッチは駐車場や資材置き場となり、社員寮まで建設された。Jヴィレッジの象徴だった美しい芝は消えてしまった。「ここにはもう、戻ってこられないんだな」。悲しさと悔しさが入り交じる中、後藤はそう覚悟して施設を後にした。

 16年秋、県外の事業所での勤務を経た後藤がJヴィレッジに戻ると、復旧作業が本格化していた。入れ替えたピッチの土を載せたトラックが1日に何十台も出入りしていた。17年4月には天然芝の張り替えも始まり、ピッチ1面に1万個近いロール状の芝が敷き詰められた。「目に見えて変わっていった。建物の完成に合わせ緑が増えていった」。不可能だと思った再興の足音が日に日に大きくなるのを後藤は実感した。

 生まれ変わった天然芝は全8面。管理担当者の斉藤健(43)は「場所が変われば管理方法は違い、毎日が試行錯誤。(再始動する)28日にいい状態にするのが自分たちの目標だ」とこぼれ落ちる汗を拭った。

 ただ、後藤は原発事故による風評の問題が脳裏を離れない。「保護者が一人でも反対すれば合宿地としては難しい。(営業を休止した)7年間は簡単に取り戻せない。安全性を発信し、宿泊者増につなげたい」。Jヴィレッジ全体の収益の6割以上を占める宿泊部門を担う後藤の決意がにじむ。既に予約が入っている根強いファンを核に、新しい客を獲得する狙いだ。

 かつてJヴィレッジ内のレストランで総料理長を務めた西芳照(56)=サッカー日本代表帯同シェフ=も応援団の一人だ。再開後は土産品の開発・監修に携わる。「Jヴィレッジは自分とサッカーを結び付けてくれた場所。県産食材を使った土産で風評払拭(ふっしょく)のきっかけにしたい」。期待と不安が交錯する中、再始動は目の前に迫る。(敬称略)

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 サッカーの聖地「Jヴィレッジ」(楢葉、広野町)が28日に再始動する。原発事故の対応拠点となり、復旧工事を経て7年4カ月。聖地再興にこぎ着けた関係者の思いに迫った。