【Jヴィレッジ再始動】聖地、新たな歴史刻む 少年チーム帰還

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JSCの選手にJヴィレッジを紹介する上田副社長(左)。本拠地とする誇りや意義を語り掛けた

 「君たちの試合と同時にJヴィレッジ再開の歴史が始まるんだ」。真新しい施設に見入るサッカー「Jヴィレッジスポーツクラブ(JSC)」の選手にJヴィレッジ副社長の上田栄治(64)が語り掛けた。28日にはスタジアムでJSCと県U―15(15歳以下)選抜の記念試合が行われる。キックオフは午後2時46分。東日本大震災発生時で止まったままのスタジアムの時計の針も動きだし、聖地は再び時を刻む。

 「もっと当たりを強く」「負けるな」。いわき市の新舞子フットボール場に少年たちの掛け声が響く。震災と原発事故後、JSCはJヴィレッジから同市に拠点を移した。苦難を乗り越え、待ち焦がれた聖地への帰還がいま現実となりつつある。「設備が整い、日本代表も練習した場所。プレーできるのが楽しみ」。中学2年生チーム主将(14)=草野中=は憧れの地でボールを蹴るのを夢見ている。

 JSCは2003年に活動を開始。サッカースクールから中学生のチーム活動に発展し何度も東北大会に出場する強豪に成長した。

 だが震災と原発事故による避難で選手は半数近くに減少。当時、中学2年生のコーチだった明石重周(しげなり)(40)は、泣きながら選手と別れたことを覚えている。「ずっと見てきた子どもたち。残念で心苦しかった」。練習場所や選手の確保で存続が危ぶまれたが、JSCの灯は絶対に消さなかった。「震災で行方不明になったメンバーもいる。彼のためにもクラブを続けたかった」

 それから7年4カ月。選手54人は再始動を待つJヴィレッジに初めて足を踏み入れた。選手を招待した上田には「今のメンバーは震災前のJヴィレッジを知らない。ここを練習拠点とする意義を感じてほしかった」との思いがあった。

 震災前、さまざまな全国大会が開かれ、聖地と称されたJヴィレッジ。選手は間近でトップレベルのプレーを見て技術を磨いてきた。「日本代表を目標とする子どもが出てくるかもしれない。希望を持ってサッカーを楽しんでほしい」。上田はピッチではしゃぐ選手を見つめながら、Jヴィレッジの未来を思い浮かべた。(敬称略)