漆工芸の魅力世界に 県美術大賞受賞、会津若松・吾子可苗さん

  このエントリーをはてなブックマークに追加 
漆文化の魅力について話す吾子さん

◆カンボジアの展覧会出品、現地で交流

 独創的な漆工芸の作品で今年の県総合美術展覧会(県展)の最高賞「県美術大賞」に選ばれた美術作家吾子可苗さん(38)=会津若松市。近年は海外での活動も増えており、今夏はカンボジアで開かれている展覧会「アジア漆工芸交流プログラムinカンボジア」に出品した。

 吾子さんは「日本の漆文化の素晴らしさを世界に広めたい」と意気込みを話す。

 展覧会は9日まで、世界遺産「アンコール遺跡群」の南側に位置するシェムリアップ市内で開催中だ。世界各国から漆芸品75点が集まった。東南アジアの漆工芸を支援する団体「アジア漆工芸学術支援事業」(代表・松島さくら子宇都宮大教授)が主催する。これまでにタイ、ベトナム、ミャンマーなどで漆芸品だけの大規模な展覧会を開いている。

 吾子さんの出品作は「matrix―Cattleya―」。マトリックスとは「母体」を意味し、生命の誕生をイメージして制作された。上部に咲くのはラン科の植物「カトレア」。昨年の県展で準大賞を受賞した作品でもある。長年にわたり「生命の存続」をテーマにしてきた吾子さんは、ランの花をモチーフに選ぶことが多いという。

 「太古から現在まで命が続いていることの奇跡を漆で表現したい。ランは独特な花の形状に魅力を感じるし、山の中でもたくましく咲き誇り、生きることにとても貪欲な花。そこが『生命』という自分のテーマにぴったり合う」

 一見すると漆作品には思えないほど独特な作風だが、「技術自体は日本に古くからある伝統的な技法を使っている」。北海道生まれの吾子さんは12年前、夫の仕事の都合で会津若松市に移り住んだ。会津漆器から「たくさんのことを学ぶことができた」と話す。

 「会津にしかない独自の技術もあり、ここに来たおかげで今のしっくりくる表現を見つけることができた。漆のことを全く知らない人が私の美術作品を見て『漆は面白い』と思ってもられたらうれしい」

 8月末にカンボジアの現地に到着し、世界中の漆芸家と交流も深めている。「国によって木の成分が違うため、海外の作品は日本の漆とは違う。カンボジア産の漆をもらえたので、これを使った作品に挑戦したい。漆の可能性をどんどん広げていきたい」と晴れやかに語った。

 あこ・かなえ 1980年、北海道士別市生まれ。東京芸大大学院美術研究科修了。2015年に第54回日本現代工芸美術展で現代工芸賞、17年に第71回県展で県美術準大賞、18年4月に第72回会津総合美術展で会津若松市長賞、6月に第72回県展で県美術大賞を受賞。会津大短期大学部で非常勤講師も務める。