葛尾「酪農」復活へ牛乳出荷準備 佐久間牧場、一から再起決意

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牛舎を点検する佐久間さん。「一からやっていきたい」と話す=4日、葛尾村

 葛尾村の佐久間牧場が13日にも、東日本大震災から7年半ぶりに酪農を復活させる。来年の牛乳出荷を目指して準備を進めており、同牧場の佐久間哲次さん(42)は「一からやっていきたい」と再起を決意する。

 「また新たなブランドをつくっていきたい」。牛舎を点検しながら佐久間さんは言葉に力を込めた。牧場には親牛と子牛を合わせて約130頭の乳牛がいたが、震災で避難させたり売るなどして全ての牛がいなくなった。酪農再開にあたり、北海道でセリに参加し、乳牛8頭を迎え入れる予定。

 牛乳生産では安全管理を徹底する。輸入牧草などで乳牛を育て、牛乳の放射線物質検査で検出限界値未満(ND)を6回以上連続で確認できてから出荷する考え。「安全・安心を積み上げて消費者の理解を得たい」と佐久間さん。出荷再開は来年1月を目指している。

 高校卒業後、北海道の農業専門学校で学び、20歳で家業の酪農を手伝うため葛尾へ戻ってきた。牛乳の質や量を充実させるために、乳牛を「放し飼い」にするなど、試行錯誤の連続。牛舎に「38メートルダッシュゾーン」を設けて足腰を強化し、体力向上につなげた。「いくら食べてもおなかを壊さないエサ」を目指し、調味料の配合も工夫した。努力が実を結び、震災前は県内JA全農グループで最も牛乳出荷量が多い牧場となった。

 築き上げた牧場のブランドは、東京電力福島第1原発事故で崩れ去った。「今までやってきたことが水の泡になった」と佐久間さん。牧場を離れる牛には「この牛の子や孫でもいいから、いつか帰ってきてほしい」と願った。

 佐久間さんは県内外の避難先を転々としたが、避難指示解除後はエサとなるトウモロコシの試験栽培に取り組むなどして、酪農再開の準備を進めてきた。

 村の住民帰還率はまだ低く、産業復興が一つの課題。佐久間さんは言う。「僕らの世代が村を引っ張っていかないと。過疎化が進む中、地域に合った農業のかたちを示していきたい」

 葛尾村は、2016(平成28)年6月に村の大半で避難指示が解除された。帰還困難区域や震災後の転入者を除く住民数は、1日現在で1236人。帰村者は259人で帰還率は21%。