「免許返納」特典内容を分かりやすく...交通弱者に優しい環境を

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運転免許の取り消し通知書を受ける自主返納者。手続きに訪れる人は後を絶たない=福島運転免許センター、福島市

 いわき市で3日に起きた運転免許返納済みの80代男性が無免許で車を運転、歩行者2人を相次いではねた交通事故。県警によると、男性は市役所で免許返納後の特典を申請するために車を運転したという。各自治体は免許返納者への支援策を打ち出すが、申請窓口の違いなど、事故は免許返納とその後の支援の在り方にも課題を残した。専門家は免許を返納した"交通弱者"に、より優しい環境を整備する必要性を指摘する。

 県警によると、事故を起こした男性は免許を返納した際に受けられる特典を同市役所で申請するため、無免許の状態で車を運転。捜査関係者によると、男性は「一度くらい運転しても大丈夫だろうと思った」などと話しているという。

 同市では、75歳以上の返納者に5000円相当の公共交通または公共施設の利用券を交付している。市役所または各支所で申請を受け付けており、JRやタクシー、温泉利用券など9種類の中から5000円分の特典を一つ選ぶ仕組みだった。

 こうした免許返納者への「特典」は広がりをみせているが、運転免許の返納と、それに伴う返納者への特典の申請窓口は各所に分散しているのが現状だ。地域の交通政策に詳しい福島大経済経営学類の吉田樹准教授(38)は「(返納と特典の手続きを)ワンストップにすれば解決する問題ではない。(自治体や企業など)特典を提供する主体が分散しており、特典内容を分かりやすく把握できる仕組みが必要だ」と話す。吉田准教授によると、山形市では、交通部局の担当者が町内会の会合などで返納後に受けられる特典を説明する取り組みが進んでいるという。

 高齢者による免許返納の動きは拡大しており、福島市の福島運転免許センターでは、返納手続きのため窓口を訪れる人が後を絶たない。センターを訪れていた80代の男性は「大げさかもしれないが、車を手放すことは夢や希望がなくなることと同じ」としつつも、「交通事故を起こしたら大変だと思って踏み切った」と心境を打ち明ける。

 県内でも免許返納の窓口で返納後の支援策を紹介する取り組みが行われているが、吉田准教授は「車が一番便利なのは間違いなく、(免許返納で)生活の質は下がる。行政側はより充実した相談態勢を作るほか、行政が自主返納を考えている人と話し合う機会も必要とされている」と指摘している。