歴史踏まえ先へ 「大字誌ふるさと請戸」編さん企画・紺野さん

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大字誌の編さんを企画した紺野さん(右)と発行者の鈴木区長

 浪江町請戸地区に住んでいた同町文化財調査員の紺野広光さん(74)=郡山市=が編さんを企画した書籍「大字誌ふるさと請戸」が出版された。紺野さんは「自分たちが生まれ育った地区の歴史や伝統を踏まえて先に進まなければいけない」と、同書を企画した思いを語る。

 同地区は東日本大震災の津波で全487世帯が全壊流失。原発事故による避難指示解除後は「移転促進区域」に指定され、住民は以前と同じ場所に住むことができなくなった。住民が散り散りになる中、地区の委員会で「ふるさとの長い歴史を何も知らないまま去るのはとても寂しい」との声が上がり、紺野さんが本の編さんに向けて動き始めた。

 同書には、地区の祭りや請戸港の風景などの写真を収録し、津波でアルバムを失った住民の思い出を補った。

 歴史編では研究者5人が古代から近現代までの地区の歴史を、信仰やレジャーなどさまざまな切り口で解説。大字請戸区長の鈴木市夫さん(79)=鈴木酒造店社長=を発行者に4月に出版、住民に配本した。

 13日には仙台市で出版を記念したシンポジウムが開かれ、執筆した研究者5人が登壇。古代の同地区の政治状況や信仰などについて話した神戸大の松下正和特命准教授は「通常、復興誌は震災後の叙述が多く、歴史が入るのは珍しい。さまざまな記録を残すことが地区の存在証明になる」と話した。

 紺野さんは「天災は仕方ないが、人災(原発事故)はそうではないことを後世に伝えたい。地区の歴史をわれわれ(元住民)だけのものにせず、多くの人に知ってほしい」と話した。

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