建設業界...進む『合併・買収』 佐藤工業が戸田建設の子会社に

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 県内建設業大手の佐藤工業(福島市)が株式を譲渡し、準大手ゼネコン戸田建設(東京都)の子会社になることが決まった。深刻な後継者不足に加え、今後訪れるであろう建設業界を取り巻く厳しい事業環境を見越し、県内でも合併・買収(M&A)の動きが見え始めている。一方で、創業者一族など同族で継承してきた企業の経営者にとって「非同族」に事業承継することへの抵抗感もある。

 業績拡大への選択肢

 「会社の業績が好調で年齢も若く、一見すると経営の悩みがなさそうでも水面下で会社の売却を考えている経営者は多い」。中堅・中小企業の合併・買収(M&A)を支援する日本M&Aセンター(東京都)の業界再編部副部長で建設・不動産業界責任者の西田賢史さんは明かした。

 建設業界のM&Aは好景気や東日本大震災後の復興特需などに支えられ、2011(平成23)年以降、右肩上がりの状況が続く。公表されているだけでも今年は8月末時点で65件に上り、95件だったピーク時の05年を超えるペースで進む。「経営状態がいい今のうちに売りたい」と考える経営者が増えているのが要因の一つという。

 売却理由のうち、最も多いのは「経営者の高齢化による事業承継」だが、西田さんは「近年は事業承継だけでなく、若い経営者による戦略的な譲渡が目立ってきている」と説明する。

 以前は「乗っ取り」といったような悪い印象もあったM&Aだが、好景気の反動による深刻な人手不足に加え、少子高齢化に伴う事業規模の縮小が予想される中、業績の拡大を経営課題とする企業にとって解決策の一つとして捉えられるようになった。

 「経営トップの営業力が勝負の決め手」との風潮が強い建設業界で、西田さんは「後継者はいるが、『先代のようにできる自信がない』と譲渡を希望するケースも少なくない」と指摘する。今後も20年東京五輪・パラリンピックまで「売り手市場」が続き、M&A件数は増えていくとみており、売り手企業は相手先が多く好条件で交渉でき、買い手企業は金回りがいいことから「譲渡できるタイミングは今がベスト」と強調する。

 将来見据え事業譲渡

 会津地方の建設会社で役員を務める40代男性は数年前、自社の一部門を事業譲渡する形での会社の再編に携わった。当時は東日本大震災の復興需要で、会社の業績は悪くなかった。しかし、いずれ需要が底を突くことを想定して事業譲渡の道を選んだ。

 得意分野が異なる企業同士が結び付いたことで仕事の幅が広がったものの、企業風土の違いなど課題も感じているという。「企業の合併は首都圏の大企業のイメージだったが、今は地方にも及んでいる。復興需要がしぼめば、経営判断を迫られる企業が増えるのではないか」と推測する。

 「御社の技術に興味を持つ企業があります」。県北地方の建設会社の経営者男性の元に最近、仲介業者を通して連絡が入った。創業家3代目の社長である男性はM&Aを検討していないというが、「将来を考えると一番いい時に売った方が楽だとは思う。マイナスな選択ではない」と話す。

 県内は復興需要のピークが過ぎ、公共施設の整備に充てる「公共事業費」が減少する一方、公共施設などの維持に用いられる「維持補修費」は増加傾向にある。男性の会社では大型工事の減少を見通し、震災前から維持修繕工事に注力してきた。「業界としては右肩下がりだが、特化した技術力を持ち、お客さんを喜ばせられる仕事ができれば『お先真っ暗』だとは思わない」とする。

 ただ事業承継には不安がある。「世襲でなくてもいいと思っているが、この先の事業環境を考えたら従業員の中で『社長をやりたい』という人がいるとは思えない。子どもたちには『選択肢として考えてほしい』と伝えている」と明かす。「景気に左右される建設業界は、先が変わりやすい。その時になったらどうするか考えたい」

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