出前授業など奮闘!聴導犬「ふく」 原発事故直後の大熊から保護

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前脚で利用者をたたき、目覚ましが鳴ったことを知らせる「ふく」=10月25日・秋葉台小(東京都八王子市)

 原発事故直後の2011(平成23)年に避難指示区域となった大熊町で保護された7歳の雄の雑種犬「ふく」が、NPO法人聴導犬育成の会(神奈川県鎌倉市)に引き取られ、聴覚障害者に必要な生活音を知らせる「聴導犬」のPR犬として活躍している。原発事故に翻弄(ほんろう)された同町生まれの1頭の犬が、適性を見込まれ聴導犬の役割を多くの人に知ってもらおうと奮闘している。

 当時子犬だった「ふく」は11年秋に、大熊町の山林で当時神奈川県にあり、被災地で動物のレスキューに取り組んでいた動物保護団体に保護され、翌12年、聴導犬候補を探していた同会に引き取られた。保護当時、ふくは親犬ときょうだい犬と一緒にいたという。

 同会代表の松田治子さん(70)が保護施設を訪れ、キーホルダーやボールで音を出すと、ふくはすぐに興味を示し、近寄ってきた。同時に保護されたきょうだい犬は聞き慣れない音におびえていた。松田さんは「ふくには音に敏感で人懐こいという聴導犬に必要な素質があると感じた」と振り返る。

 ふくは目覚まし時計やドアベル、火災報知機など約10の音を聞き分け、生活に必要な音を知らせることができるほか、簡単な手話も理解できるようになった。17年3月に聴導犬認定試験に合格し、利用者の下で働いていたが、利用者の都合などから同会に戻った。

 ふくは人懐こい性格を生かし、小学校などで出前授業を行うPR犬として再出発した。10月25日には東京都八王子市の秋葉台小で出前授業を行い、目覚まし時計が鳴ると前脚で利用者をたたいて起こす様子などを実演した。終了後は触れ合いの時間が設けられ、子どもたちの笑顔が広がった。

 厚生労働省によると、10月現在で全国の聴導犬の実働頭数は67頭で、本県にはいない。全国で941頭が実働している盲導犬と比べてもまだ知名度は低い。松田さんは「聴導犬は耳が不自由な人の体の一部。ふくを通じて聴導犬について多くの人に知ってほしい」と話す。

 「ふく」の名前には「福島」生まれであることと「幸福」になってほしいという思いを込めた。松田さんは「ふくと一緒に大熊町の方が多く避難している会津若松市を訪れ、活躍を報告しに行きたい」と目を細めた。