【記者ルポ】自動運転車に『未来』感じる 横断者を認識し減速

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自動運転中の車内では運転手がハンドルから手を離している。横断する歩行者を認識し減速した=3日午前、浪江町

 浪江町で始まった公道走行実証試験で自動運転車に試乗し、自動運転を体感した。約6分間の試乗だったが、自動運転の可能性や未来を感じる時間だった。

 JR浪江駅―浪江町役場間は、日ごろからよく利用する道路だ。大きなカーブはないが、一直線ではなく少し北東に曲がっている。沿道には商業ビルや双葉署浪江分庁舎、整備工場、銀行店舗跡などが並び、震災で被災した建物や更地なども目立つ。

 試験に使われる車両は、街中でもよく見掛けるミニバン。屋根の上にレーザー光を使ったセンサーが搭載されているくらいで市販車と変わりはない。車内も普通の乗用車と変わりはないように見えた。違いは、ルームミラー付近に並ぶカメラや、運転席と助手席の間に少し大きめの突起物があることぐらいだった。

 「出発するのでシートベルトを締めてください」。担当者に促され、自動運転車の後部座席に座りシートベルトを締めた。JR浪江駅前の駐車場から公道に出るまでは運転席の運転手がハンドル操作を行うが、試験用の道路に合流すると運転手がハンドルから手を離した。頭では分かっているが、やはり「事故が起きないか」と一抹の不安がよぎる。

 時速約30キロで進む。浪江町役場までの約1.1キロの道のりには信号機が2基ある。車内に搭載されたカメラが信号の色や障害物を認識するというが、どちらも青だったのでそのまま通過した。

 途中の横断歩道で男性が道路を横断していた。するとセンサーが人を認識、即座に減速した。きちんとセンサーが覚知することに安心した。

 町役場の駐車場に左折して入っていくところまでが自動運転だと明かされ、そこまでできるのかと驚いた。一方で、駐車場内は車両や人の出入りが激しいので人力での操縦となった。

 町役場を折り返して駅に戻る。スムーズな走行で安定していた。人の飛び出しなどへの対応はまだ難しいため、緊急時には運転手の操作で回避するという。そこでふと疑問に思ったのは、運転手の急な発作などによるハンドルの誤操作などはどうなるのだろうかということ。しかし、担当者は「助手席に座るシステムオペレーターがボタンを押して停止させます」と説明してくれた。運転席と助手席の間の不思議な突起物こそが、緊急停止用のボタンだった。

 テストコースなどの限定的な空間と違い、公道ではさまざまな事態が想定される。課題も多く見つかるだろう。完全自動運転まで道のりは長いだろうが、来年2月末まで震災・原発事故で被災した浪江町をフィールドに、走行データが蓄積される。このデータを活用し将来、自動運転が実用化されるかもしれないと想像すると、大きな夢を感じた。