髪切るトラック店舗 父の夢実現!福島県内初の移動式理美容

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鏡付きセット台などを備えた移動式店舗でのサービスを始めた鈴木さん家族

 福島県いわき市の理美容店「ヘアークリエイティブロダン」は、県内初の移動式理美容店舗の営業を始めた。「利用する側にもっと選択肢があっていい」と同店社長の鈴木明夫さん(32)。過疎化や少子高齢化などによる消費者ニーズの変化への対応を図る。12日に最初の利用者に向き合う。

 導入した移動式店舗の最大の魅力は、「店」と同じサービスが提供できること。ロダンは同市の総合磐城共立病院内で1975(昭和50)年に開店した理容所がはじまり。14年前からは訪問理美容サービス部門「どこでもロダン」も展開。高齢者施設や福祉施設に出向いている。

 ただ訪問理美容は、障害者や要介護者ら特定の対象者にしか行えない法律上の制約があり、障害者の付き添いや家族は希望しても利用できないのが課題だった。

 購入した中古の2トントラックは、シャンプー台2面と鏡付きセット台3台を備え、作業面積や照明など、通常の店舗と同じ衛生基準を満たしている。移動式店舗は父の故英治さんが生前から描いていた夢だった。

 明夫さんが父の夢の続きを描き始めたのは今年のゴールデンウイーク。クラウドファンディングで呼び掛けると全国から支援の出資が集まった。

 「人が集まらないし、もうからない。しかし(移動店舗は)必要」。不安はあったが、鈴木さんは市内の事業所などにチラシを配って利用を呼び掛けて歩いた。共感する事業所がいくつか現れ、来年1月から福祉事業所数カ所を訪問することが決まった。

 実際に移動店舗を使ったテストでは思わぬ効用があることが分かった。「きれいになること以上に、上半身が映り込むほど大きな鏡の前でカットしてもらう『非日常』に意味があった」と鈴木さん。12日の訪問先第1号は、トラックで髪を切ってほしいとの声があった福祉施設だ。

 高齢化が進む過疎地、子育てに追われる母親、インフラが回復しない双葉郡で帰還のために頑張る作業員、企業の福利厚生。鈴木さんは福祉の垣根を越えたサービスの可能性を思い描いている。まずは高齢者のニーズを捉えたサービス展開で流れをつくる。止める場所さえあればどこにでも行けるのが強みだ。「『いつでも、どこでも、誰にでも』オアシスを提供していきたい」