指定弁護士、大津波「予見できた」 東電強制起訴禁錮5年求刑

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 「何ら反省もなく、有利に配慮する事情は何一つない」。東京電力福島第1原発事故を巡り、東京地裁で26日開かれた旧経営陣3人の論告求刑公判。検察官役の指定弁護士は、厳しい口調で被告3人の過失を指摘し、禁錮5年を求刑した。原発事故の刑事責任を問う強制起訴裁判は、最終局面に入った。

■大津波予見可能性

 公判では、本県沖での大津波の危険性を指摘した政府見解(長期評価)の信頼性が最大の争点となっている。

 指定弁護士は、長期評価を策定した地震調査研究推進本部は、権威ある地震学者らが結集した国の特別機関と説明。長期評価は「国の公式見解」で、「コストを度外視した学術的、科学的な知見」などとして、改めて正当性を主張した。

 東電は長期評価に基づき2008(平成20)年3月、第1原発に最大15.7メートルの津波が到来する可能性を把握。

 指定弁護士は、部下からこの計算結果を報告された時期などに基づき、遅くとも武藤栄元副社長(68)は08年6月、勝俣恒久元会長(78)は09年2月、武黒一郎元副社長(72)は09年4~5月ごろには大津波の危険性を予見できた、とした。

■結果回避義務違反

 弁護側はこれまで、対策を取っても事故は防げず、電力供給を担う東電が原子炉を止めるのは現実的ではないと主張してきた。

 指定弁護士は論告で「考え得る措置すら講じなかった者に、事故は防げなかったという資格はない」などと批判し、複合的な対策で「事故は防げた」と繰り返した。

 自然災害の発生は予測が不可能なため、原子力事業者は「常に緊迫感を持って対応する必要がある」とも述べ、津波の予見に基づき、「工事完了まで原子炉を止める義務があった」とした。

■3人の責任

 3人が津波対策を実行しなかったのは、新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発(新潟県)が停止、東電の収支が悪化したことに伴う「経営判断」と指摘。各立場で権限を行使せず、「原子力事業者としての責任を放棄していた」と追及した。いずれも自分の過失を自覚していないとして「責任の重さに差をつける理由はない」と結論付けた。