【人生100年時代】五木寛之さんに聞く(1) 50代から収穫期

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いつき・ひろゆき 1932(昭和7)年福岡県生まれ。早稲田大露文科中退後、作家デビュー。67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門 筑豊篇』他で吉川英治文学賞を受賞。『生きるヒント』『大河の一滴』『親鸞』など著書多数。近著に『眠れぬ夜のために』(新潮新書)など。

 「人生100年時代」という言葉を、最近よく耳にする。実際、100歳以上の高齢者は急増し、決して珍しい存在ではなくなった。長寿は本来、寿(ことほ)ぐべきものである。だが、喜びより不安を感じる人が少なくない。未曽有の長寿時代を私たちはどう生きていけばいいのだろうか。福島民友新聞社は新年にあたり、「人生100年時代」との向き合い方や心構えなどを3人の識者にインタビューした。トップバッターは人気作家の五木寛之さん(86)。体験を踏まえた健康観や死生観を語ってもらった。(聞き手 社長・編集主幹 五阿弥宏安)

 迷いとともに「航海」

 ―一昔前は「人生50年」と言われていました。今では「人生100年時代」。戸惑いや不安を抱く人が少なくありません。
 「私のエッセー集に『地図のない旅』という本があります。人生100年時代を考える時、いつもそのタイトルが浮かびます。人生50年時代はそれなりに先達の教えがあり、見取り図を描くことができた。でも、これから先、特に75歳から残り25年の時期は『海図のない航海』に出ているようなもの。私自身も迷っているところです。多くの人が漠然とした不安を抱えて現在を暮らしている。そこに深く共感しています」

 ―1990年代、長寿の双子姉妹きんさん、ぎんさんが大ブームになりました。当時は100歳が珍しい存在でしたが、今は「もしかしたら自分も」という時代になりました。
 「きんさん、ぎんさんでよく覚えているのは『テレビ出演のギャラは何に使うか?』という質問に『老後の蓄えにする』と答えていた。とてもユーモアのあるお二人でした。『そんなふうになりたいな』という願望もあり、うらやましかったですね。ただし当時は例外中の例外として、遠いところにいる人たちだと思って見ていた。でも、今は自分自身の問題として100歳がとても身近です。私も今年で87歳。『不安と期待』が入り交じった複雑な心境ですね」

 ―お感じになっている「不安」とはどんなものでしょう。
 「一番は肉体的な不安です。私自身も体のあちこちに故障が出てきます。80歳を過ぎると、八つのトラブルがあると言われます。私も歩くのが不自由になって『変形性股関節症』と診断されました。昔は『百寺巡礼』という紀行集を出し、よく歩いていましたが、最近は寺院に行くと手すりにつかまってやっと石段を上る始末です。前立腺肥大で夜間にしょっちゅう目が覚めます。健康問題は大きいですね」

 ―では「期待」とは、どんなことでしょう。
 「古代中国では人生を青春、朱夏、白秋、玄冬の四つの時期に区分していました。このうち朱夏が人生の真っ盛りとされていますが、私は白秋や玄冬の時期こそハーベストタイム(収穫期)だと考えています。営々と培って育ててきた果実を手にする黄金期こそ、実は50代以降の後半生です。白秋や玄冬には寂しい響きがありますが、実際には生き生きとした意味合いが含まれています。玄という言葉は主に『黒い』という意味で使われますが、玄妙や幽玄という言葉があるように『生命の源』という意味が含まれ、『将来のビッグバンを予想させる生命力にあふれた艶やかな黒』という意味もあるそうです。青春、朱夏、白秋を経て、その先は真っ黒な冬と考えると気持ちが萎(な)えますが、将来のビッグバンを予想させる黒なのですから、期待が持てます」

>>>【人生100年時代】五木寛之さんに聞く(2) 病は治めるもの
>>>【人生100年時代】五木寛之さんに聞く(3) 次代へ心の相続

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