【人生100年時代】小泉進次郎氏に聞く 類のない国づくり挑戦

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こいずみ・しんじろう 神奈川県横須賀市出身。衆院当選4回。自民党厚生労働部会長。内閣府・復興政務官、自民党農林部会長、党筆頭副幹事長、党「人生100年時代戦略本部」事務局長などを歴任した。父は小泉純一郎元首相。

 「人生100年時代」の生き方を考える新春企画の2回目は、自民党厚生労働部会長の小泉進次郎衆院議員(37)に話を聞いた。小泉氏は党内の若手議員らによる政策グループで「人生100年時代」に向けた政策提言を取りまとめ、新たな社会像を積極的に打ち出している。提言に込めた思いから死生観まで多岐にわたり語ってもらった。(聞き手・社長・編集主幹 五阿弥宏安)

 「想像以上」世界も驚き

 ―まだ30代で若い小泉さんが「人生100年時代」に向けて提言をしているのは、どんな思いからですか。
 「なぜ『人生100年時代』をキーワードに掲げて国づくりをしているか。それは政治にとって最大の挑戦であり、世界中で史上初の国づくりへの挑戦だからです。勉強すればするほど、厚労部会長として社会保障改革に取り組めば取り組むほど、間違いなく『人生100年時代』は日本が世界にアピールしていける商品だという思いを強くしています」

 ―その理由は。
 「海外の政治家や外交官、経済人に『人生100年時代』の国づくりの方針を話すと、すごく驚かれます。海外ではまだ想像できない。でも日本では『人生100年時代』を見据え、働くことや学ぶことをもう一度、再定義する時代に来ています。人生80年設計という今までの形を100年設計へ変えていく。これをあらゆる分野でやっているのが今の日本だと話すと、海外の方々は『アンビリーバブル(信じられない)!』の反応ですよ」

 ―提言では戦後の発展を日本の「第1創業期」としたのに対し、2020年以降を「第2創業期」と位置付けています。その意味は。
 「日本人男性の平均寿命が50歳になったのが1947(昭和22)年。今は30年以上も平均寿命が延びています。これからの国づくりは全く別の国をつくるようなものです。日本を株式会社に例えると、会社には第1創業期があり、ビジネスモデルを変える第2創業期がある。これからは豊富なストック、高度な技術・産業基盤がある。人生設計も一直線のレール型から、編み目のように多様な生き方が出てくる。地方は全国画一的な発展の在り方ではなく、福島なら福島にしかできないまちづくりを後押しして人を呼び込めるような力、産業を生み出していく。全く違う国の形ですね」

 「現役」の定義変えよう

 ―世界的にベストセラーとなった「ライフ・シフト―100年時代の人生戦略」の著者リンダ・グラットンさんと対談されたそうですね。
 「彼女が目を輝かせ『ナイス・アイデア』と盛り上がったのは、僕が『人生100年カフェテリア』構想を話した場面。先進国では高齢者でも学びたいときに行くのが大学。これから日本も大学生が10代後半から20代前半だけでなく、何歳からも学べるようにする。学内には保育園、幼稚園、高齢者施設があり、お昼になると、車いすの高齢者、ベビーカーを引く子育て世代も食堂に集まってくる。食堂の中がゼロ歳から100歳であふれている。そんな多様な学びの場をつくりたいと思っています」

 ―学びは本当に大事です。「欽ちゃん」で有名なコメディアンの萩本欽一さんは77歳で駒沢大に通う4年生です。萩本さんとも交流があるそうですね。
 「欽ちゃん、最高ですね。入学理由を尋ねると『70歳過ぎると物忘れがひどいんだよ。右から入ったものがどんどん左に抜けていく。どうしよう。そうだ、出ていく分は入れればいい。よし勉強しよう』と思ったそうです。こんな発想があるのかと、目からうろこでした」

 ―それは素晴らしいですね。普通は物忘れが激しくなると落ち込むのに、本当に前向き思考ですね。
 「欽ちゃんが言うには、大学1年から4年へと進むにつれ、『脳が今一番働いている。認知症予防は病院に行くより大学に行こうだよ』と。まさに名言です。高齢者の方にこの話をすると、みんな生き生きします」

 ―学び直したいという気持ちを持つシニアの人は多いと思います。
 「そうです。大学も高度な研究を強化する一方で、もっと社会に門戸を開き、さまざまな年齢層の人々に人類の知を伝える取り組みがあっていいですよね」

 ―大学の在り方が問われていますね。
 「例えば福島大は東北で唯一、農学部がありませんでしたが、今年4月に食農学類が開設されます。僕は『東北で唯一、農学部がないからつくるというなら間違い。福島ならではの取り組みをやることが大切なんだ』と大学関係者にお伝えした。コンピューターに特化した会津大にも期待しています。今後はサイバーセキュリティーやAI(人工知能)の分野で深刻な人材不足となります。会津大の出身者が日本の基盤を支える人材に育ったら、全国から優秀な人材が福島に集まってきます」

 ―日本では高齢化が急激に進み、高度な技術を持つ人が大量に辞めていっています。とても、もったいないことです。多様な人材を活用できるかどうかが日本の将来を大きく左右すると思います。
 「今の日本で『現役』と言えば生産年齢人口である15~64歳を指します。でも15歳で働く人は非常に少ない一方、64歳を超えて働いている人はかなりいます。例えば『現役』の定義を18~74歳に変えます。今のままだと現役世代の割合は大きく減っていきますが、定義を変えれば30年先でも現役世代の割合はあまり変わりません。『景色が変われば意識が変わる』という言葉を僕はよく使いますが、ぜひ『現役』の定義を見直して人々の意識を変えたいですね」

 ―社会保障、教育、働き方など「人生100年時代」に合わせた制度設計は待ったなしの状況です。
 「人生設計に大きく関わるものが年金です。働き方に応じて受給年齢を柔軟に見直したり、働いていると年金が減る仕組み(在職老齢年金制度)を廃止したりするなど『長く働くほど得をする制度』に改革しなければなりません。最近、僕が考えていることは、働き方改革のその先にあるのが、『生き方改革』なんです。働き方改革では長時間労働の是正が強調されますが、一方で勤勉な日本人の働く前向きな意欲をそいでは元も子もありません」

 ―私も同感です。長時間労働の是正は必要ですが、日本人は仕事を通じて生きがいや社会の一員としての意識を持ってきました。
 「日本の第1創業期で成功した原動力は、まじめで勤勉な日本人、つまり働き者です。当時は『モーレツ社員』と言われましたが、これからは、より楽しく、自由に自分らしく、働き者でいられる人生。そして、今までよりも働く期間が長くなるのが人生100年時代。長く働くことが不利益にならないような制度を整えていきます」

 ―長寿の時代では、自分の人生をどう締めくくるかも問われます。お父上の小泉純一郎元首相は日本尊厳死協会の会員だとお聞きしています。
 「父からは『俺が末期状態になったら延命はやめろよ』と事あるごとに言われています。父は動物や虫が好きで『ライオンを見てみろ。自分の力で食えなくなった時が死ぬ時だ。人間も同じ。だから自分の力で食べられる時までが寿命であり、それが一番幸せだ』と言っています。そう語ってくれるのは、とてもありがたいと思います。いざというとき、準備ができますから。父の幸せとは何か、どんな人生の終(しま)い方を望んでいるのだろうかと今から聞いているのは息子としてありがたいですね」

 ―小泉さんご自身はどんな死生観をお持ちですか。
 「私も延命は嫌ですね。痛みは取ってほしいけど。さっき生き方改革と僕は言いましたが、生き方と終い方はセットなんですよね。結局、どういうふうに生きたいかと考えると、どういうふうに人生の幕を閉じるのか、終っていきたいのかと考えるじゃないですか。一人一人が考える時代です。人生100年時代は『多死社会』。多くの人が亡くなる時代であり、死と向き合う機会がより多くなります。そうなったとき、いろいろなところで生き方や終い方を互いに話し合える環境になっていくんだろうなと思っています」

 ―小泉さんが100歳になるまで、あと60年以上あります。どんな100歳をイメージしていますか。
 「恐らく僕らの世代の100歳は今の元気な80代ぐらいの人だと思う。ある学生が『100年も生きたくないですよ』と言ったので『生きたいかどうかを抜きにして、100歳まで生きちゃうんだよ。医学の進歩を含め、それがこれからの日本なんだ』と説明しました。『僕らが100歳になる時代は今の元気な高齢者のようになるよ。そう言われるとイメージが変わらない?』と続けると、『長く生きるのも悪くない』と学生の考えも変わりました」

 ―長寿には健康が大切ですが、残念ながら本県は健康指標が全国平均よりかなり劣っています。健康への意識を高めるために、どうすべきでしょうか。
 「ぜひ実現したいと思っているのが、公園をスポーツジムのようにすることです。公園には子ども向け遊具がありますが、ジムにあるような健康器具や筋力トレーニングの機器も備え、公園で子どもから高齢者まで全世代が使えるようにする。もちろん、子ども優先時間があってもいい。そうすれば、お金をかけず街中の公園で運動ができる。みんなが身近な場所で運動し、健康づくりや病気の予防に取り組みやすい、さまざまな仕掛けを社会の中につくりたいですね」

 ―病院のサロン化より公園のサロン化の方がいいですよね。大賛成です。
 「街中に人のにぎわいがあると、みんな元気になるんです。人の気持ちに与える影響も大きい。福島ならではの取り組みが出てくることを期待しています。健康で大切なものは食。福島は食の王国であり、もっと地元の食と健康を生かしたまちづくりを進めてもらいたいと願っています」

 ―ありがとうございました。