【人生100年時代】内堀知事に聞く(2) 健康づくり知恵と工夫

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「人生100年時代」の県づくりを語る内堀知事(右)と五阿弥社長

◆高齢者と地方創生

―健康寿命を延ばすためにも、高齢者が健やかに社会で活躍できる場を広げていくことが重要です。本県で参考となる事例は、どんなものがあるのでしょうか。

 「廃校になった校舎を活用した三島町の宿泊施設『森の校舎カタクリ』をご紹介します。地元のシニア世代の女性たちが中心となり、心を込めた手作りの料理を提供していますが、すごいのは黒字経営を続けていること。高齢者の生きがいづくりと地域活性化、廃校利用、そして都会などから来るリピーターとのコミュニケーションなど、地方創生のモデルケースだと思います」

―自治体などから「うちには何もない」「国や県から助成をもらわないと無理」という声をよく聞きますが、大事なのは知恵と工夫、そして行動力ですね。

 「その通りです。例えば棚倉町のリゾートスポーツプラザ『ルネサンス棚倉』。素晴らしい施設ですが、駐車場が下の方にあり、階段を上がるのが大変で、地元の人も嫌がるほどでした。そこで施設では階段の側面にプレートを付けました。階段を1段上ると0.1キロカロリー消費すると分かるようにした上で、『健康づくりは階段で』『ちりも積もれば山、健康も』などと利用者に階段を上る効果を気付かせてくれます。上るのがおっくうだった階段を今は喜んで上る。エスカレーターを造れば何千万もかかるし、維持費も大変ですが、プレートは簡単で大した金額もかかりません。まさに知恵と工夫です」

◆健康長寿県 

―「人生100年時代」を生きる上で基本となるのは「健康」だと思います。でも、残念ながら本県の健康指標は全国平均に比べてかなり低いのが実情です。

 「県民の健康指標は以前から全国平均を下回っていましたが、震災と原発事故で生活環境が変わり、長期避難が継続する中、さらに悪化しました。今は改善傾向にありますが、震災前には戻っていません。急性心筋梗塞による死亡率が全国ワースト1位となり、高血圧や糖尿病の率も高く、運動不足の方も多いなど、厳しい状況にあります」

◆「ちょっと健康によいこと無理なく」

―知事は「健康長寿県」に向けて「食」「運動」「社会参加」の三つが大事と指摘していますね。

 「一番大事なことは、日ごろの生活習慣を見直し、ちょっと健康に良いことを無理のない範囲で実践することです。一度に変えようとすると長続きせず、三日坊主に終わります。『食』は減塩に努め、野菜をたくさん取ることです。『運動』は近ければできるだけ歩いたり、自転車を使ったりする。『社会参加』では地域の祭りや行事に参加してみることです。継続するポイントは三つ。『気付くこと』『楽しく続けること』『地域ぐるみや家族ぐるみでみんなで取り組むこと』です。今年も健康への取り組みを強化していきます」

◆国への提言 

―日本は「人生50年」から「人生70年」へ、そして「人生100年」へと短期間に急速に寿命を延ばしてきています。長寿は人類の夢であり、寿(ことほ)ぐべきことですが、「老後不安」を感じている人も多いようです。

 「長寿は喜ばしいことですが、年金問題をはじめとする老後の生活資金など、経済的な不安や社会の変化に対する不安にもつながります。病気、けが、認知症の発症で社会活動にも支障が出るのではないか、家族に負担を掛けるのではないかという不安もあります。国や自治体も『人生100年時代』にしっかり向き合っていくことが必要です」

―「人生100年時代」に向け、国も社会保障改革や働き方改革など取り組みをスタートさせています。知事として国に要望することは。

 「人生100年を前提にすると、従来の制度や考え方を大きく変える必要があります。まず社会保障制度です。元気な高齢者が増えるのは間違いありませんが、病気や要介護になった時にも安心して暮らせる医療・介護の体制構築が不可欠です。『エイジフリー社会』への転換を進める上で、誰もが住み慣れた地域で生活し続けることができるようにする地域包括ケアシステムも重要です。古里から離れると、どれだけつらくて苦しい思いをするか。それは震災と原発事故によって避難を余儀なくされた本県が一番よく分かっています。できる限り、住み慣れた所で暮らし続けることの大切さを原発事故によって実感しました。このことを国に強く伝えていきます」

―「人生100年時代」では働き方も変わってきますね。

 「意欲のある高齢者が、それぞれの事情や希望に応じて多様な働き方を選択できる環境をつくることが重要です。そのためにもサポートする機能として、ロボットやICTの技術を生かすことが大切です。足腰がつらい人がロボットスーツを付けるとスムーズに動けるようになるなど、技術の進展がエイジフリー社会に役立ちます。日本だけでなく、これから高齢化が進む欧州や米国、中国でも使えます。課題先進国の日本が当事者として解決する努力が新しいマーケットを創ることにつながります。本県でも最先端の技術開発に取り組む企業は増えています。そうした発信も強化していきます」

◆学び直し

―従来の人生モデルは「学習期」「仕事期」「余生」という三つのパターンが基本でしたが、「人生100年時代」ではかなり違ってきます。終身雇用ではなく、いろんな企業を渡り歩いたり、自分で起業したりする人は増えるでしょう。そこで大事なのが「学び直し」です。

 「先日、関西の大学で福島の復興状況を伝える機会がありました。早めに到着して講義室に入ると学生が心理学を学んでいました。フロイトやユングなど、なかなか聞く機会のない講義で面白かったですね。学び直しは楽しいと感じました。生涯学習は県の施策でもありますが、自発的に学ぶ楽しさ、とりわけ人と関わる中での学びの大切さは『社会参加』そのものです」

―知事はどんなことを学び直したいですか。

 「二つあります。歴史と語学です。昨年は戊辰戦争から150年の年でしたが、福島民友新聞の連載『維新再考』を読み、新しい発見がありました。教科書では分からない歴史を学びたい欲求があります。震災と原発事故からの復興・再生を目指す福島は世界中から注目されています。知事として海外の人と会う機会が多いので、簡単なあいさつはその国の言葉で話すよう心掛けています。そうすると相手の反応は全く違います。外国語を学ぶことで世界が近くなる。この楽しさを感じています」

◆理想の100歳像 

―それは楽しそうですね。ところで、知事はどんな100歳になりたいですか。

 「できる限り健康で、笑顔のある100歳でいたいものです。自分自身が笑顔でいることはもちろんですが、人を笑わせられる人間になりたい。県は吉本興業と連携した事業を行っていますが、人を笑わせる力はすごいものがあります。各地で『よしもと×ふくしま みんなでチャレンジ大運動会』を開催すると、芸人の皆さんはいつも子どもたちからお年寄りまでを爆笑の渦に巻き込んでいる。笑うことが健康の一番の本質に思えます。相手をニコッとさせられる年の重ね方ができたら最高です」

―最後に新年にあたっての決意と県民へのエールを伺います。

 「本県は今なお急激な人口減少や、地震、津波、原発事故、風評という複合災害との戦いという重い課題を抱えていますが、みんなで一緒になって挑戦すれば必ず乗り越えられます。『人生100年時代』でも、年齢や男女の違い、障がいの有無にかかわらず、自分でやれることがあればやってみる。私は『チャレンジ県ふくしま』を掲げていますが、まずは県民一人一人ができることからチャレンジを続けてほしいですね。特に食、運動、社会参加。昨日より今日の方が調子いいなと笑顔になる。近くの人と話して互いに笑顔になる。そういう県づくりを目指したいと思っています」

―ありがとうございました。

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