地域で支える高齢者の移動 「ボランティア輸送」いわきで開始へ

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 福島県いわき市山間部の高齢者の新たな移動手段を確保する「ボランティア輸送」が本年度、同市の三和、田人の両地区で始まる。住民が運営し、行政がサポートする新たな仕組みで、高齢化や過疎化が進む山間部の交通問題解消のモデルの一つとしても期待される。利用を希望する地区の高齢者からは「開始が待ち遠しい」との声が上がる。

 県内一の面積を誇る同市では、路線バス廃線などの影響で、高齢世帯が多い山間部の移動手段確保が長年の課題だった。市と運営主体となる両地区の地域振興協議会は2017(平成29)年度から導入に向けた協議を進め、運行計画や運用方法を検討してきた。

 今回両地区で始まるボランティア輸送は、運転免許を持つ地区住民有志が無償で運転手を務め、運転免許を持たない65歳以上の高齢者の移動を支援する。平日の日中のみの運行で、移動範囲は両地区内のほか、商業施設などがそろう近隣地域に絞った。

 市は輸送のための環境を整備。輸送車両として7人乗り電気自動車(EV)を三和、田人両地区に2台ずつ配備するほか、車両を保管する支所などにEV用充電設備を整備し、住民の取り組みを後押しする。

 地元の課題解決に一役買おうと住民も協力的だ。現在、両地区ではそれぞれ約20人のボランティアドライバーが登録。三和地区に登録する同市の住民(66)は、自身が住む周辺にバスなどの公共交通機関が通っていないことを挙げ、「周りにも高齢者が多く、いずれ自分も面倒を見てもらう立場。人ごとではない。動ける間は協力したい」と話す。ドライバーは運転技術についての講習を受けた後、2月中に試験輸送を始める予定だ。

 三和地区に住む住民(77)は「街への買い物などに付き添ってくれた夫が亡くなり、なかなか遠出することはなくなっていた」と言い、ボランティア輸送を「本当にありがたいサービス。心待ちにしている」と声を弾ませる。

 運転手の手配や利用希望者の調整など運用面の課題もあるが、市の担当者は「運用開始後、改善しながら進めていきたい」としている。