小惑星探査機「はやぶさ2」...砂採取の鍵 衝突装置は福島県発

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」による小惑星りゅうぐうの探査が、これからヤマ場を迎える。18日の週には、りゅうぐう着陸が予定されている。3~4月には、りゅうぐうの地表に銅製の弾丸を撃ち込んで人工クレーターをつくり、世界初となる小惑星内部の砂などの試料採取に挑む。世界が注目するこのミッションに、「福島発」の技術が大きく関わっている。

 設計と爆薬製造担う

 小惑星に人工クレーターをつくる「衝突装置」(インパクター)の設計と爆薬の製造は、日本工機白河製造所(西郷村)が担った。同社社員らは「(4年前の打ち上げの時のように)緊張感が沸々と湧いてきた。衝突装置が役目を果たし、宇宙に関する新しい知見が生まれてほしい」と胸を高鳴らせている。

 宇宙線の影響による風化が少ない小惑星内部では、砂や岩が太陽系誕生時の状態を保っている可能性が高く、太陽系の成り立ちや生命の起源の謎を解き明かす大きな手がかりとなる。

 ミッションの流れはこうだ。探査機はまず、衝突装置を切り離し、小惑星の裏側に退避する。爆発によって猛スピードで打ち出された銅板が弾丸状に変形、小惑星表面に衝突し、人工クレーターをつくる。探査機は被弾を回避し、クレーターに着陸して砂などを採取する。

 同社はJAXAの公募がきっかけで、2011(平成23)年1月、プロジェクトに参画。社員約10人の少数精鋭でつくるプロジェクトチームを結成し、衝突装置の基本設計が始まったが、完成までには幾多の困難があった。

 震災で開発ストップ

 衝突装置の基本設計が本格始動した約2カ月後に、東日本大震災が発生した。製造所が被災し、衝突装置の開発はストップ。その年の秋には衝突装置の実証試験が予定されており、窮地に立たされた。幸運にも、電気系統は無事だったため、コンピューターによる設計を24時間フル稼働させた。「納期との闘い。毎日がカレンダーとのにらめっこだった」。統括責任者としてチームをけん引した研究開発部開発第1グループの松崎伸一チーフ(48)は当時を振り返った。

 同年5月下旬には製造所が全面稼働し、衝突装置の試作品の製造を再スタートさせた。実験や設計変更などの試行錯誤を繰り返し、迎えた1回目の実証試験。見事、爆発によって衝突装置から打ち出された銅板は弾丸状に変形し、目標としていた秒速2キロの速さでの発射に成功した。松崎チーフは「(成功の瞬間)心の中でガッツポーズをしていた。JAXAの関係者からも『120点です』とお褒めの言葉をもらった」とチームと喜びを分かち合った。

 爆薬の製造にも労力を費やした。同社によると、銅板を安定した速度で、きれいな弾丸状に発射させるためには、衝突装置の容器内に真空状に爆薬を充填(じゅうてん)する高度な技術が必要だという。爆薬はどろどろとしたペースト状のため、丸一日をかけて少しずつ容器に充填した。実装モデルを使っての2度目の実証試験も無事に成功し、14年12月、衝突装置は宇宙へと打ち上げられた。

 県内企業の技術採用

 衝突装置には同社のほかにも県内企業の技術が採用されている。爆薬が詰められた容器の製造は石川製作所(鏡石町)と子会社のタマテック(同町)、容器と銅板の溶接は東成イービー東北(郡山市)が手掛けた。まさに、福島発の技術が結集した衝突装置だ。試料採取の前段階となるデータ収集などでは、会津大の技術が重要な役割を担っている。

 日本工機白河製造所の寺島実取締役製造所長(60)は「(プロジェクトに携わることは)社員にとっての励みになる。『ふくしまプライド』を持って開発を続けてきて良かった」と語った。