夫婦で挑んだ継承「遠野和紙」 自立へ奮闘!川崎からいわきに

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地域おこし協力隊として「遠野和紙」の技術継承に取り組む祐さん(右)、綾子さん

 いわき市遠野町の伝統工芸紙「遠野和紙」の技術継承へ、川崎市から地域おこし協力隊に就いた夫妻が挑戦している。2021年3月末までの任期中、地域の伝統を継承しながら生計を立てる道を模索。まだ駆け出しだが「2人の個性が違うから、その分発見も多い」と力を合わせ、課題を乗り越える。

 技術継承へ挑んでいるのは平山祐さん(36)、綾子さん(32)夫妻。「1回すくったら水を捨てる。もう1回すくって縦、横に揺する」。2人は1月、地元の遠野高で3年生の手を取り、卒業証書となる和紙作りを指導した。こなれた様子だが、協力隊に就任したのは昨年10月。本格的な紙すきは12月からだ。

 2人は震災と原発事故の前から、祐さんの母の実家があるいわき市などへの移住を考えていた。昨年7月、東京都内で開かれた地域おこし協力隊の説明会に参加したことがきっかけで協力隊に応募。小さいころから絵が好きで、和紙によく絵を描いている綾子さん。「巡り合わせ」を感じた2人の決断は早かった。

 現在、遠野には和紙職人がいないため、2人は埼玉県ときがわ町の職人のもとで基礎を学んだ。就任した2人に早速任されたのが、遠野の児童、生徒に贈られる卒業証書作り。冷たい井戸水に手を浸し、予備を含めて約400枚をすいた。

 「こんな大変な思いをして和紙は出来上がるんだ」と綾子さん。厳しい作業から生み出される和紙の尊さや喜びを身にしみて感じる。同じ原材料を使い、同じ動作ですいたつもりでも和紙の仕上がりは毎回異なる。2人で悩みながら和紙作りに向き合う。

 ただ、どんなに苦労して作った和紙も売れなければ自立はできない。2人は、花の形に折った和紙を水に浸す「加湿花」や、和紙に絵を描いた間接照明など、商品化のアイデアも練る。かつては障子紙に利用されていた遠野和紙。価格的にも求めやすく、生活の一部に和紙があることを楽しんでもらえる商品を目指す。

 和紙の原料となる楮(コウゾ)畑の草刈りや枝切りといった夏場の重労働、楮の皮むき、表皮取りなど根気のいる作業には、ボランティアが協力。ボランティアのリーダーで元市遠野支所長の高木忠行さん(63)は「2人は相当な覚悟でここに来ている。和紙で生活できるのか分からないが、みんなで知恵を集めれば何かできるかもしれない」と応援する。

 2人の計画では今後、遠野和紙の認知度を高める活動を展開。3年目は和紙作りを続けながら、生活する道筋をつけたい考えだ。「甘い話でないことは分かっているが、やめるつもりもない」。2人の決意は固い。