古里勤務...念願の『永久出向』 鈴木さん、警視庁から福島県警

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上司と談笑する鈴木さん(右)。パトロール業務を通し復興を支えようと考えている

 警視庁から福島県警に「永久出向」してから2年が過ぎようとしている。福島署地域課の事務室には、机に向かい上司と談笑する巡査長の鈴木弘(ひろむ)さん(31)の姿があった。古里での勤務にすっかり慣れその表情に、あの日の「無力感」が浮かぶことはなかった。

 「地元の人のために何もできなかった」。鈴木さんは、東日本大震災のあった2011(平成23)年3月11日の思いを忘れたことはない。浪江町の実家を離れ、東京都府中市にある警視庁警察学校に入校し1カ月ほどたった時だった。

 講義中に被災した。急いで避難し、テレビを通して津波に襲われる古里の状況を知った。震災対応のため、上司から装備準備の指示がすぐに下った。待機し続けたが「採用されたばかりで警察官の卵の中の卵。(被災地に)行きたくても行けなかった」と振り返る。

 浪江町で勤務する願いがかなったのは震災から4年後の15年だった。都内での交番勤務を経て福島県警への特別出向を希望。災害対策課特別警ら隊員として被災地のパトロール業務を命じられた。

 拠点は双葉署浪江分庁舎。実家からわずか100メートルほどの距離だった。「辞令に感謝した」。4年越しの願いだった被災地での勤務。東京電力福島第1原発事故による避難で変貌(へんぼう)した古里の民家を一軒一軒訪ねた。愛称の「ウルトラ警察隊」にちなんだ「ウルトラパトロール」と呼ばれる業務。2人一組で1日約200軒を巡回、窃盗被害に遭っていないかなどを見て回り、家人に確認のメモを残した。

 業務中に出会った、一時帰宅した避難住民の顔が印象に残る。「こちらが同情するような状況なのに笑顔で話し掛けてくれた」
 2年間の特別出向で実感したのは温かな県民性。震災から6年が過ぎようとしていた。「(福島県警ならば何かあっても)すぐに県民の下に駆け付けられる」

 県警への「永久出向」を決め希望を出した。現在は、自動車警ら係に所属している。2人一組でパトカーに乗車して巡回。事件現場に急行して現場対応をしたり、不審者への職務質問などの業務を担当、充実した日々を過ごしている。

 「被災地から福島市に移り住んだ人もいる。慣れない土地で不安な人がいるかもしれない」。治安を維持することが古里の復興につながると強く信じている。