筆遣いの妙、若冲作品に興奮 「枝の先まで神経行き届いている」

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若冲の変幻自在の表現力を楽しめる作品が並ぶ会場。来場者は「奇才」の魅力を思い思いに味わった=26日、福島市・県立美術館

 「生き生きとした筆遣いが素晴らしい」「心の洗濯ができた」。福島市の県立美術館でいよいよ始まった「東日本大震災復興祈念 伊藤若冲(じゃくちゅう)展」。大勢の人で混み合った初日の会場では、若冲の変幻自在の表現力に興奮したり、安らぎを得たりと、来場者が「奇才」の作品の魅力を思い思いに味わった。

 会場一番乗りは、始発電車で来たという二本松市の男性(31)。「描かれた枝の先まで神経が行き届いているその緊張感、一方でにじみなどから感じる穏やかさ。150キロのストレートと80キロのスローカーブを投げ分ける好投手を思わせる画家だと感じた」と若冲を野球に例えてみせた。

 米国出身で福島市在住の作家エミ・ランゲ・カワムラさん(48)は、6年前の2013(平成25)年に同美術館で開かれた「若冲が来てくれました」展にも訪れた。「若冲の作品は日本の伝統を良く表現していてかわいらしい。特に鶴を描いた作品が気に入った」と笑顔を見せた。

 この日は、県外から訪れた美術ファンも多かった。山形県上山市の会社員男性(45)は家族で来場。男性の一家も前回の展覧会を訪れており、長女(14)は「前回よりも鮮明な印象を受けた。枡目(ますめ)描きは根気がすごいと思った」と声を弾ませた。鑑賞後は県北地区へドライブに向かい、若冲展を機に本県観光も楽しんだ。

 震災、原発事故後の福島の姿を思い浮かべながら鑑賞する人も。子ども6人と訪れた福島市の女性(40)は、若冲が「天明の大火」で大きな被害を受けた京都の復興を祈って描いたとされる「蓮池図(れんちず)」に感動。「何もない所から花が咲くその風景を、福島の復興への道のりを重ねながら見た」と涙を浮かべて語った。

 ◆SNS魅力世界へ ライター・田中泰延さん

 高い情報発信力を持つライターの田中泰延(ひろのぶ)さん(49)=大阪市=が26日、「東日本大震災復興祈念 伊藤若冲展」の会場を訪れ、約3時間にわたって熱心に若冲作品を取材した。取材の成果をツイッターなどで広く発信する。

 田中さんは「青年失業家」と称し、ライターなどとして幅広く活動。ツイッターのフォロワーは4万5千人に上る。県内だけでなく首都圏など県外へも展覧会の魅力を発信してもらおうと、会員制交流サイト(SNS)に詳しいSML(福島市)社長の熊坂仁美さんの協力で来場が実現した。

 田中さんと、案内役を務めたフォトグラファーでライターの新田真由子さん(40)=福島市=が、県美術家連盟の斎藤勝正会長の説明を受けながら会場を回った。

 田中さんは「年代を経るごとに手法がどう変わっていくかがすごく分かりやすい展示。若冲はもともと興味があり、鑑賞できてうれしかった」と話した。