はやぶさ2・人工クレーター実験成功 「福島の技」鍵握った装薬

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衝突装置の分離成功の知らせを受け、拍手を送る矢野さん(左から2人目)や寺島所長(同4人目)=日本工機白河製造所

 探査機はやぶさ2が成功させた金属弾の撃ち込み。地球から約3億1400万キロの小惑星りゅうぐうで行われた世界初の実験は、福島県企業の高い技術力によって成し遂げられた。

 ◆衝突装置設計、爆薬の製造 日本工機白河製造所

 「あっという間にこの日を迎えた。プロジェクトの進行を信じて見守っていた」。衝突装置の設計と装置内の爆薬を製造した日本工機白河製造所(西郷村)の同装置開発プロジェクトチームに所属していた矢野英治さん(44)は感慨深げに振り返った。

 同製造所の寺島実所長(60)によると、ミッション成功の鍵を握ったのは、装置内の円すい形容器へ爆薬を入れる「装薬」。ペースト状の爆薬に気泡や隙間が生じると、りゅうぐうに撃ち込まれる銅板に爆発の力が伝わらず、発射の正確性が失われるという。

 矢野さんや寺島所長をはじめ、従業員ら約30人は5日、緊張した面持ちで宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))が配信する管制室のネット中継に見入った。同日午前11時35分ごろ、はやぶさ2からの衝突装置分離が無事完了したとの報告が入った際には集まった従業員らが大きな拍手を送った。

 実験成功の知らせを受けた寺島所長は「まずは安堵(あんど)した。"福島発"の装置が世界的プロジェクトに大きく貢献できた」と喜びを語った。

 ◆衝突装置銅板と容器の溶接 東成イービー東北

 試行錯誤を重ねた成果が、ようやく結実した。衝突装置の銅板とステンレス製容器の溶接を担当した東成イービー東北(郡山市)。品質保証部長代理の水野豊さん(43)は、実験の成功に「ほっとした。この一言に尽きる」。

 「宇宙環境を想定した試験をクリアした。あとは信じるだけ」。同社では社員約20人が祈るような表情でネット中継を見守った。

 実験では、地表に打ち込む弾丸をまっすぐ飛ばすことが重要となる。爆発の際に偏りなく板が外れるよう、均一な強度で溶接することが求められたが、銅とステンレスでは溶ける温度が異なるため、「通常の製品にはない、厳しい要求」(水野さん)だった。

 電子ビーム溶接を使い、時には深夜にも及ぶ調整を繰り返した。「実験のことが、ずっと頭の片隅にあった」。水野さんは、前例のない実験が行われた宇宙に思いを巡らせた。

 ◆火薬を詰める衝突装置の容器製造 石川製作所、タマテック

 鏡石町の石川製作所と子会社のタマテックは、火薬を詰める衝突装置の容器の製造を担当。2009(平成21)年から実験と改良を重ねてきた。

 両社が製造した容器は円すい形のステンレス製で底面は直径30センチ、高さ17センチ。苦心したのは厚さだった。当初はアルミ素材で厚さ3ミリの容器を作ったが、密閉できないことが判明。3倍ほど重く、硬くて切削しにくいステンレスの使用を迫られた。

 設計上、許される重量は2.5キロ。厚さ15ミリまで迫ったが、まだ500グラム足りなかった。"企業秘密"とされる技術で到達した厚さは1ミリ。かつてない薄さで、25キロを実現した。

 吉田武タマテック副社長(55)は「結果が出てほっとしている」と喜んだ。「作業の積み重ねが夢のような仕事の実現につながった。プロジェクトの一端を担うことができ光栄。やってきたことを誇りに思う」とかみしめるように語った。

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