車窓からの「夜の森」...9年ぶり花見 富岡・1日限りのバス観桜

  このエントリーをはてなブックマークに追加 
バスの中から帰還困難区域内の桜を観賞する乗客=6日午前、富岡町

 「変わらない姿で私たちを待っていてくれた」。東京電力福島第1原発事故で帰還困難区域となっている富岡町夜の森地区の桜並木が6日、一般公開された。東日本大震災、原発事故前の2010(平成22)年以来、住民は9年ぶりに再会した桜の木々に、いつか再び寄り添って暮らすことを約束した。

 桜並木の全長は約2.2キロだが、帰還困難区域のバリケードで分断され、自由に観桜できる区間は約03キロ。再び桜並木の全景を眺めたいと町民が熱望していたことから、町はこの日に限ってバスの中から観桜できるようにした。

 県内各地の避難先から集まった住民や、かつての観光名所を再訪した観光客ら約900人が次々とバスに乗車。帰還困難区域内を20分ほどかけてゆっくりと走り、乗客は車窓から延々と続く桜並木の絶景に感嘆の声を上げた。

 「懐かしい光景に心が和んだ」。自宅が夜の森地区にあり、今もいわき市で避難生活を送る女性(74)は感慨深げに咲き誇る桜を見つめた。散歩が日課で、原発事故前は毎年春になると、つぼみが膨らみ、満開を迎え、桜吹雪となる桜並木の移り変わりを眺めるのが楽しみだった。

 同地区は住民が再び住めるようにする「特定復興再生拠点区域」(復興拠点)に含まれ、国が除染を進めている。町は23年春までの避難指示解除を目指すが、建物の解体が進んで更地が広がり、かつての町並みは失われつつある。女性さんは「町の景色が様変わりする中で、桜の堂々とした姿は昔のまま。住民が古里とのつながりを保つために大切な存在で、これからも守り続けてほしい」と願う。