【大熊町ルポ】解除の町...静かに始動 見ごろの桜に希望を抱く

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見ごろを迎えている桜の花。後ろには来月7日に業務を始める町役場新庁舎が見える=10日午後、大熊町大川原地区

 事故を起こした原子力発電所の立地町として初めて、10日に一部地域で避難指示が解除された大熊町。解除初日に記者が町を歩いた。ソメイヨシノが見ごろを迎えた町内は解除前と変わらず、復興に向けて着実に時を刻んでいた。

 浪江支局のある浪江町から車で国道6号を南下する。廃炉作業が進む東京電力福島第1原発のクレーンなどを横目に見ながら大熊町を目指した。

 震災・原発事故以降、取材で何度も町に入っているが、避難指示解除前の前日までと町内の雰囲気は変わらなかった。昨年4月から準備宿泊が行われ、役場新庁舎や災害公営住宅などの建設工事が進んでいるからだろうか。工事関係の車両がひっきりなしに町内を行き交う。

 これまで訪れる機会がなかった大川原地区にある大熊食堂で腹ごしらえをしようと決めていた。開店後の午前11時30分すぎ、選んだメニューは博多とんこつラーメン。箸を進めるうちに、店内に人が増えてきた。作業着姿の人がほとんどで、この食堂が復旧・復興の最前線で働く人たちを食の面で支えていることを実感した。

 県道いわき浪江線(通称・山麓線)沿いに桜の花が咲いているのが見えた。桜は思わず声が出てしまうほど見事に開花し、避難指示解除に花を添えているようだった。

 「準備宿泊から住んでいるので、解除されたからといって取り立てて実感は湧かない」。近所に住む会社員井戸川清一さん(65)はこう話しながら「来月7日には近所の町役場新庁舎が業務を始める。便利になるし、町職員も戻ってくる」と、顔なじみの町民の帰還に期待を膨らませている様子だった。

 初唐の詩人・劉希夷(りゅうきい)の七言古詩の句「年年歳歳花相似たり 歳歳年年人同じからず」を思い浮かべた。

 花は同じように毎年咲くが、花を見る人は変わるとして、自然は変わらず、人の世の移ろいやすさを歌う。桜は震災の年から変わらず咲き続ける一方、大熊町も着実に変わっていくだろうという希望を抱いた。